第26話 エリシアを失望させてしまった



 今日はエリシアと城下街をお散歩する予定だ。


「本日は暑そうですね。日焼けしそうで少々心配ですわ」

「日に焼けたエリシアちゃんも最高だよ!」

「ふふっ。アルトはいつもそうやって茶化すんですから」


 真っ白でツルツルのお肌も姫様らしくて最高だけど、ちょっと日に焼けたエリシアも見てみたいな。


「日焼け止めクリームを塗りますので手伝って頂けませんか?」

「喜んで!」


 俺にとっての一大イベントと言っても過言ではない。

 なんせ、エリシアの素肌に直で触れられるチャンスなんだからな。

 今回は相手から頼まれているのだから、自ら太もも触りにいった初日とは違う。


「わたくしが自分で塗り辛い場所をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「勿論よろしいですよ! 何なりとお申し付けください!」


 あまり嬉しそうにし過ぎると下心が見え見えで不信感を抱きかねないからな。

 いつも以上に冷静にならなければ。


「こちらから目視が出来ない首の後ろをお願いしたいのです」

「了解!」


 ミディアムロングの髪の毛が邪魔になってしまう上に、直接見る事が出来ないからムラになる可能性が高い。

 俺が手を貸してしっかりと塗り塗りして上げないと。


 手にクリームを絞り出し指の先に満遍なく浸透させる。

 エリシアの綺麗な髪を掴んで持ち上げた。


(とてつもなく美しいうなじ! 眼福眼福ー!)


 繊細に滑らかに手際よく塗っていく。


「くすぐったいですー」

「すぐ終わらせるから少し我慢してね!」


 エリシアは首が弱いのか。

 若干気持ち良さそうにしている姿を見ると、首筋を舐め回したくなりそうだ。


 今日は初日以来のワンピース姿を披露してくれているから、少しだけ背中の方まで手を伸ばしてみようかな。

 本当にちょっとだけだから大丈夫。


「背中の方も塗ってあげるよ」

「は、はい。あまり行き過ぎてはダメですよ?」


 うはぁぁ。

 エリシアちゃんが気にしてる!

 ウブで可愛くて最高すぎてソフトにエロい!


『ガラガラーー』


 ユカリが唐突に入ってきた。


「エリシア様が外出中の間、私がお部屋を警備しておりますので、存分に楽しんできてください」

「お忙しい中済みません。よろしくお願いします!」


(このタイミングでユカリの登場は想定外だな)


 あらぬ疑いをかけられる前に、さっさと終わらせて外に出てしまおう。


「それはそうと、何故アルトはエリシア様のお背中に手を突っ込んでいるのでしょうか?」

「日焼け止めクリームを塗ってあげてるだけだぞ!」


 この変態メイドめ。

 純情少女のエリシアちゃんに卑猥な発言は謹んでくれよ!

 いつ禁止ワードが飛び出すかと気が気じゃないぜ。


「背中を見る目付きが嫌らしいです」

「な、何を言っているんだ君は。産まれつきこういう目をしているんだ。仕方ないだろう」

「私のおっぱいを見た時の目と一緒です」


 ユカリが部屋に入ってから僅か30秒で死亡フラグが立ってしまった。

 近いうちにこうなることは予想してたけどさ、お前の理性を信じた俺が馬鹿だったよ!


「えっーと……お、おっぱいですか?」

「違う違う、アイツ最近仕事が忙しいみたいでさ、疲れが溜まってて意味不明な発言しちゃったんだよ。実際は違うから安心してね……!」


 もう誤魔化し切れないぞ!

 16歳少女の胸をはだけさせた何てバレたら、積み上げた信頼が崩れ落ちてしまう。


「ユカリったらもぉ、勇者様を揶揄い過ぎですよ? そんなことある訳ないじゃないですか」

「そうだそうだ! 女子更衣室でも覗かない限り有り得ない————————」


「覗いてたじゃないですか」


 ……。


「そ、それは本当なのですか?」

「本人に聞いてみてください」


 凄まじい板挟みに合ってるんだが……。

 最近ユカリの相手をしてなかった気がするし、勇者に構って貰えないのが悔しい気持ちは分かるんだ。


「アルト……わたくしのも……もしかして……」

「マジでエリシアちゃんのだけは見てないから心配しないで……!」

「じゃあやっぱり他人の……胸は見たということなのですか……?」


 ……。


「あ、あれは事故で、隠し通路があったから探検してて、たまたま行き着いちゃって……!」

「そうでございましたか……あまり興味本位で覗いてはダメですよ?」

「うっ……」

「わたくしも失念しておりました。勇者様と言えど、そういった事に興味を持たれたてもおかしくはありませんもの」


 えっ……?!


「ユカリ、少し外に出てもらってもよろしいですか?」

「はい。かしこまりました」


 かなり気まずい空気感だ。

 多分エリシアちゃん怒ってるだろうな。

 親密度だだ下がりでまた上げないとじゃん。

 ユカリの奴、後で覚えてろよ————。




 ……。





「これで我慢して頂けませんか?」

「えっ……」


 抱きしめられた。

 覗き行為を行った俺に、熱い抱擁をしてくれている。


「エリシア……」

「少しずつわたくしが鬱憤を追い払ってあげますから、あまり悪いことはしちゃダメですよ?」


 心優しき姫君の突発的な行動に、しばらく動く事が出来ずにいた。


「うん……わかったよ……!」



【 エリシア・モンテローズ 】

【 親密度 : 4000 】


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