第3話

「奥様、ティッシュを」



「ありがとう」




良く出来た侍女はサッとティッシュを差し出してくれる。



それを受け取り、一応鼻を押さえておく。




通った鼻梁に薄く血のように赤い柔らかな唇。



何故、柔らかいのを知ってるのかって?



それはほら夫婦ですものっ。



細いのに鍛え抜かれた身体に濃紺の着物が似合いすぎてもうっ、色っぽすぎるっ。



足も長く歩く姿がまたっ。



最っ高で最っ強!!



わたくしの旦那様、全世界一素敵っ。



毎日毎日、こんな近くで見れて……触れて……。



丁はなんて幸せ者なのでしょう。




「奥様、ティッシュの代えを」



「ありがとう」




まぁ……鼻血が出てましたわ。



いつの間にかティッシュが真っ赤に。



こんな姿、旦那様には見せられませんっ。



いそいそとティッシュを代えていると……




「丁」



「っっ」




ハァァァァァアッ!!



旦那様に呼ばれました!!




「ハイ!!」




丁はここですっ、旦那!!



意地で鼻血を止め、ティッシュを真鬼に。




「奥様、釘バットは置いて……奥様ー!?」




わたくしは走る。



そんなわたくしに微笑んで両手を広げてくださる旦那様。



迷わず、その腕に胸に飛び込むと抱き締められた。




むふふ。


でゅふふふふふっ。




「笑いが漏れてるっ。奥様笑い方恐っ」




旦那様の片腕の多鬼が何か言っているが聞こえない。




「すまないな。仕事ばかりで構ってやれなくて」




謝られる。




「何を仰います旦那様!!わたくしは旦那様のお姿を見れるだけでも幸せです!!」




もったいないぐらいですっ。




「丁」



「だから旦那様は気兼ねなくお仕事に集中して下さい。他のことはわたくしに任せて」




わたくしは旦那様を見て微笑んだ。




「ありがとう、丁」




ううっ、眩しいっ。




この笑顔を守るためなら、相棒の釘バットを何億回でも振り、敵を蹴散らしましょう!!




「釘バットを振る前に家事をしましょうよ、奥様」




多鬼がいらないことを言う。














先ずはコイツからだな。

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