第7話
丁side
「なんっじゃコリャア!!」
叫んだわ。
おもわず叫んでしまったわ。
はしたなかった……。
すごく、はしたなく叫んでしまったわ。
刹鬼様が聞いてないといいのだけれど……。
しかし……なんなのコレはっっ。
持つ手が怒りでブルブルと震える。
あり得ない上に赦されませんわ!!
「奥様」
障子がノックされ、真鬼が姿を見せる。
長めのショートカットは炎のように赤く、小さな二角。
キリッとしたツリ瞳は黒色。
中性的な容姿の、わたくしの専属侍女。
「真鬼!ちょっと聞いてよっ」
真鬼と居ると、つい話し方が幼くなってしまう。
ダメよ、ダメダメ。
わたくしは鬼の主、刹鬼様の妻。
常に品行方正であらねば。
わたくしがダメな妻であれば、娶って下さった刹鬼様が悪く言われてしまう。
それだけはあってはならない。
「はい」
わたくしの言葉に笑って頷いてくれる真鬼。
可愛いわ、そしてとても良い子。
「真鬼、コレを知ってる?」
「それは……」
わたくしはズズイッと真鬼の前に一冊の書を差し出す。
「人界の書ですね」
「そうね。そうなのだけれど、そうでなく」
わたくしは内容を知ってるのかと聞いたのだけれど……。
「??」
真鬼は首を傾げた。
そんな仕草も表情も可愛いわ。
「読んだことはある?」
「ああ、そういうことでしたか。いいえ、読んだことはございません。その書が何か?」
「そう。この書の書名は……」
「書名は?」
「桃太郎」
「桃太郎……?」
人界ではとても有名なお話で、子供達によく読み聞かせをしているらしい。
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