第26話

初めて出逢ったのは、人間の屋敷でした。


鬼の子どもは弱く、連れ拐われることも多々あり。


すぐ傷の癒える鬼の身体は、痛めつけて楽しむにはうってつけで。


そういう人間に売られていました。



そして……売られた先で私は角を折られました。



2本あるから1本くらい良いだろ、そんな理由で。




“もう大丈夫だ。よく耐えた。よく生きていてくれた”




角を折られ瀕死の私の前に現れたのは、美しい美しい鬼ー。



刹鬼様は屋敷の者達を半殺しに、私を鬼ヶ島に連れて帰って下さった。



私の傷が癒えるまで、恐怖が消えるまで、ずっとずっと側に居て下さった。



角を折られてから数百年。


刹鬼様と出逢って数百年。



“丁”



刹鬼様は私の光で命。


美しく優しく強い、刹鬼様に恋をした。



けれど、刹鬼様は鬼の王となることが決まっていて。



小さくて、身分もない私には手の届かない御方だった。



刹鬼様の隣に立つに相応しい鬼となるために、血反吐を吐いて、鼻血を吹いて、ライバルを蹴落とし蹴落とし、刹鬼様の父上様に躙り寄り仲良くなりーー。




“丁。好きだー”




そう刹鬼様に言って頂いた日のことは、もうっっ昨日のことのように思い出せます!!


あまりの色気に思い出し鼻血も吹きますわよ!!



刹鬼様に好きになって頂けて、父上様にお許しも頂いて、私達は夫婦となれました。



刹鬼様が王となり、更に輝かしき御方に!!


そんな御方の隣に立ち続けるために、努力を、自分磨きを怠ったことなどありません!!




それはこれからも。



それを、血の繋がった“弟”というだけで、刹鬼様に愛されている鍾鬼様。



私と契りを交わしたというだけで、刹鬼様に長い間冷たい態度をとり哀しませてきた鍾鬼様。



甘ったれた義理弟。



その腐りねじ曲がった根性




「ハッキリ言い過ぎですよ!!奥様!!」



「多鬼、黙って」



「いやいや、真鬼」




叩き直してやりますわ。



















ヒュンヒュンと私は釘バット振り回す。


最初はゆっくり、どんどん速くしていく。




「本気だ……。旦那様」



「綺麗だ、丁」



「ダメだ、こりゃ」



「奥様、ファイ」




真鬼の声援。



任せて!!



グッと足に力をいれ、鍾鬼様に飛びかかろうとしたその時。





「鬼門より、天界の者達がっっ」



「「「「「「!!」」」」」」





無線から、切羽詰まった連絡が入りました。

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