第12話

夜、刹鬼様の腕枕で眠りにつきながら今日あったこと話す。



この時間が一番至福の時。




「しかし桃は丁好きだろう?」



「う"っっ」



「丁が美味しそうに食べるのを見るのが俺は好きなんだ。桃の殲滅は諦めてくれ」



「刹鬼様!!……はい!!」




好き……だなんてっっ。


きゃっ。




「それに俺が人間に負けると思ってるのか、丁は」




わたくしを見つめる刹鬼様の黒い瞳が強く深く輝く。




「いいえ!!いいえ!!旦那様は誰にもっ、何者にも負けませんっ!!」




強く強く首を横に振る。



刹鬼様はお強い。



負けませんし




「負けさせません。わたくしが」




貴方様が戦う時は必ずわたくしも横に立ちましょう。



桃太郎?


犬、猿、キジ?



そんな奴らがこの鬼ヶ島に来たなら、わたくしが貴方様に辿り着く前に殲滅しましょう。




「頼もしいな」





ククッと刹鬼様が笑う。





「旦那様」



「ん?」



「約束して下さいませんか?」



「約束?」




刹鬼様がわたくしを腕枕したまま体をこちらへ向ける。




「わたくしより先に死なないで下さいませね」



「丁」



「旦那の居ない世界など考えられない」




そんなことを思うだけで涙が出る。




「丁」




折れた角に刹鬼様の唇が触れる。



瞼、鼻先、頬




「刹鬼様……ん」




そして優しく甘く唇を塞がれ、抱き締められる。




「俺は死なない。未来永劫、お前の側でお前と共に生きる。幸せに笑って」



「刹鬼様」




そんな未来を望んで下さるのですね。



嬉しい。




「約束ですよ」



「ああ」




小指を差し出すとすぐに刹鬼様の小指が絡む。




約束ーー。



そしてわたくしは優しく触れて下さる刹鬼様にこの身を委ねた。




「刹鬼様」



「丁」



「愛してます」



「愛してる」















未来永劫刹鬼様だけをー。

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