第11話

「桃を殲滅してくるって言ってましたよ、さっき」



「桃……?」




多鬼めっ、いらないことをっ。



ギッと多鬼を睨む。



そして真鬼がスッと持っていた書、桃太郎を刹鬼様に差し出す。



ああっ真鬼!!




「コレを読んだのか」



「……はい」



「読んで桃を殲滅しようと?」



「桃がなければ、桃太郎は生まれませんし……」



「「「「…………」」」」



「人界に行ったついでに、犬と猿とキジも殲滅してきますので、2日3日かかるかと」



「動物まで!?」




うるさいわよ、多鬼。




「2日3日もですか……」




ああ、そんな泣きそうな顔しないで真鬼。



というか、連れて行こうと思っていたのだけれど、残る気だったのね?




「……ククッ」



「「「!!??」」」



「アーッハッハッハッハッ!!」





!?




刹鬼様が声を上げて笑ってらっしゃる!!



ああああああああっ!!


なんてっ、なんて可愛らしいのっ!!



まるで幼子のようっ。



目にっ目に焼き付けなければっっ。



多鬼も真鬼もビックリの、目パチクリ。



刹鬼様はいつも穏やかで、優しく微笑まれる。



こんな風に声を上げて豪快に笑うことは滅多にないのです。




わたくしをギュッと抱き締めたまま、刹鬼様は笑い続ける。



旦那様が笑ってくれるのは嬉しい。


けれど……。



何故?


何故、笑われているのかがわからないっ。



それさえわかれば、今後、元気がない時などに笑わせて差し上げられるのにっ。




ジーっと可愛らしい旦那様を観察していると




チュッ!!




「!?」




ニッコニコの刹鬼様にキスをされましたがーっ!?



ふにっと柔らかい唇がーっ。



鼻血っ鼻血出る!!



真鬼ーーーーっ!!



真鬼に助けを求めるも、真鬼はおろか多鬼さえも居なかった!!



なーっ!?








「人界へは行かせない」



「えーーーっ!?」




予想外で許可が下りませんでしたわーっ!!



刹鬼様に笑いながら人界への外出を却下されたのでした……。



桃……。

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