第15話

『丁』




インカムから聞こえてきた刹鬼様の吐息混じりのお声が、わたくしの全身を駆け巡る。



刹鬼様のお声に全身を犯されているようで、ゾクゾクしますわっ。



インカム万歳。



歓喜に震えて昇天してしまいそうになるのを、なんとか堪える。




『丁?』




はわっ、昇天してる場合ではありませんでしたわっ。


刹鬼様がわたくしを呼んでらっしゃる!




「はい!旦那様!」



『うぉっ!?奥様、声デカっ!俺の繊細な鼓膜が破れるっすよ!』




多鬼……居たのね。


え?


繊細?




「鼓膜の1つや2つ、奥様に破られるなら本望じゃない。多鬼」



「そうね。そうよね、真鬼」



「はい、奥様」




良い子ね、真鬼は。



頭を撫でて上げると、嬉しそうにニコニコと笑う。





『真鬼。後で話があるからな』



「私はない」




あら多鬼、一方通行ね。




『そっちは異常ないか?』



「はい、旦那様。こちらは今のところ、肝試しをしていた人間が数名迷い込んできましたが、問題なく人界へと帰しました」



『そうか。だが気を付けろ。何かあったらすぐに言え』





優しい刹鬼様。



お声からそれが伝わってくる。




「はい。心得ております」



『多鬼はどうだ?』



『こっちも問題ないっすね。天界の霊魂が2つ、3つ迷い込んできたぐらいっす』




今、多鬼は刹鬼様の側におらず、わたくし達とは別の扉を1つを守護している。



何事もなく、刹鬼様の出陣がなく、このまま終わりますように。



そう願い




「刹鬼様」



『ん?』



「奥様!!」



「!?」




突然、真鬼に呼ばれた。



警戒している声で。



そして




「こんばんは、奥様。今宵は月が綺麗ですね」

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