第33話

「うわぁあああんっっ」




泣き声が聞こえてきます。



これは、あの女天使のものですね。



一体何が?



お仲間が行ったはず……




ようやく着いた私と真鬼が見たのは、平伏す鬼達と怒り狂う男の天使、そして……



泣きじゃくる女天使の姿でした。



あ……?



誇り高き鬼達が……何を天使に平伏しているのか……




「奥様」




ドンッ!!




私は釘バットを地面に叩きつけた。




「これはどういうことなの?貴方達」



「ひぃっっ」



「奥様っ」



「あのっあのっ」



「刹鬼様以外に平伏すなど……」




あってはならない。




「立ちなさ」



「待ってくれよ、丁ちゃん」



「名前で呼ぶなと言っている」




ブンッと釘バットを男天使の方へ向ける。




「「……」」




男天使は怒りも顕に、鬼達を見ていてこっちには目もくれない。



ふむ……。



泣く女天使。


怒る男天使。



良いことではないのは一目瞭然。



多分……悪いのは鬼側、なんでしょうね。




「何があったのでしょう?」



「俺が駆けつけた時、アンジェラはこのクソ共に身体中を撫で回され……服を脱がされかかっていた」




ギリギリと歯を食いしばりながら天使が言う。




「……あ”?」




地獄の底を這うような声が出た。




「「「ヒィイイイイイイッ!?!?」」」




アンジェラを見ると、仲間に抱き抱えられ自分の身体を抱きしめてカタカタ震え泣いている。



それが演技だとは思えない。




「奥様……」



「どういうこと……?」




私はゆっくりと平伏し顔を上げない鬼達を見る。



ドンドン冷えていく空気に鬼達も震えだす。




ドンッ!!



グイッ……



釘バットで鬼の一人の顔を上げる。




「どういうことかと聞いている」



「あ……あの……その……」




視線をあちこちに飛ばし一度もこっちを見ない。


もうそれだけでわかる。



なんてことを……。




ドンッ!!




「やりました!!ムラムラしてっ!!」



「動けないアンジェラちゃんに絶好のチャンスだと思って!!」



「我慢出来なかったんですっ!!」



「……そう。立ちなさい」



「「「丁様ーーーっっ」」」



「オイッ」




抗議してくる天使に視線を向けて黙らせる。



許されたと思った鬼達が嬉々として立ち上がる。




「丁様っ、俺達っ」




何か話しかけてくる鬼達だったが、私は釘バットを振り上げた。




「「「へっ?!」」」

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