第32話

「さて、真鬼。私達も参りましょうか」



「はい、奥様」




きちんと帰ったか、見届けないとなりません。



天使の後を追い、走り出そうとすると




「オイッ」




全く……。




「なんですか?負け……鍾鬼様」



「今、負け犬って言おうとしなかったか?」



「てへ。バレちゃったわ、真鬼」



「奥様、うっかりですね」




キャッキャッと真鬼と笑う。


この真鬼がまた可愛いったらっ。




「ケンカ売ってるのか?」



「はい?ケンカですか?そんな」




目を伏せる。


けれど次の瞬間。




「心の底からの本心を言っただけで、負けた方にケンカを売るなんて……。私の圧勝ですもの。そんな無駄なことは致しませんわ」




なんて悪鬼顔負けのわっるい表情で嗤って言ってやります。



けれどそこまで。



鍾鬼様と遊ぶ時間はありません。





ワナワナと震え絶句している鍾鬼様に頭を下げ、今度こそ天使を追って




「弱い奴程よく吠えて逃げるってな」



「やだ、鍾鬼様ってば、ご自分のことをそんな風に」



「お前のことだよっ」



「では」




鍾鬼様の挑発には乗らず走り出した。




「言い逃げかぁっ、ごるぁっっ」



「もうっしつけぇっこの男っ」



「奥様、素が」



「ああっ」



















「ここから、奥様と鍾鬼様の義理姉対弟の長きに渡る戦いが始まるのでした」



「真鬼?真鬼?誰と話しているのです?」

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