第17話

人界へ……?



え?


今この人、あらやだ間違えましたわ。



イラッとしたあまり。



この御方、人界は行きたいなどと仰りました?



我が旦那様が禁止しているというのに。




『丁』



「刹鬼様、問題ありません」




刹鬼様のお手を煩わすまでもありません。



今にも飛んで来そうな刹鬼様(愛の力ですわ)にそう言い




『奥様、俺が』




普段、わたくしにツッコミしかしてこない多鬼まで。




「いいえ、多鬼。来てはなりません。貴方は貴方の任務を遂行しなさい」




そして来てくれても、やはり貴方でも敵わないわ。




『しかしっ』




珍しく焦ってるわね。



いつも飄々としてるのに。



飄々としてわざと、わたくしに殺られてくれのに。




「多鬼」



『……はい』




キツく言ってごめんなさいね。



でもね、貴方は刹鬼様の大事な片腕なのだから。



それにいつも言ってるでしょう?



旦那様の敵を蹴散らすのはわたくしの役目。



それが旦那様の弟君でも。



身内贔屓、例外などございません。



わたくしは大きく息を吸った。



ナメられたものですね。


わたくしなら通すとでも?



わざわざ、わたくしが守護する扉に来たのはそういうことなのでしょう。



しっかし通しませんわよ。



刹鬼様の命令は絶対です。



釘バットを振り回したいのを我慢して、鍾鬼様と向き合う。



その後ろでは砂鬼様がニヤリと微笑んでおられます。



これにもイラッ。



え?


何?


わたくしが負けるとでも思ってらっしゃる?



……









ふざけんなよ?




「奥様、地が」



「あら、ほほほほほほ」




まぁ、心の中だけなので許して下さいな。





「顔にも出てました」



「嘘っ」




それはちょっとマズいわね。



そんな不細工な顔、刹鬼様には見せられないっ。

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