第22話
怪力勇猛・無慈悲で恐ろしいー。
そんな鬼達さえ恐れるのが、鬼王刹鬼様。
わたくしを今、強く抱き締めて下さっている旦那様ですわ。
ああっ。
荒れ狂う、美しくも恐ろしい雷が容赦なく地に落ちる中、揺るぎなく立つ刹鬼様はなんと神々しいのでしょう!!
こんな御方に抱き締められてるなんてっ。
鼻血っ、鼻血が出そうですわっ。
が、いつもティッシュを差し出してくれる真鬼は多鬼に庇われ少々遠い。
なんたる不覚!!
女性たる者がティッシュ1つも持っていないとはっ。
真鬼に頼りすぎてましたわ……。
わたくし、反省。
「兄上……」
「鐘鬼」
っと、そのような場合ではありませんでしたわ。
雷によって距離が出来た兄と弟……刹鬼様と鐘鬼様が対峙する。
砂鬼様は雷を恐れ腰を抜かし、小さくなってブルブルと震えておられる。
それもそうでしょう。
今、鳴り落ちる雷は普通の雷ではありません。
刹鬼様のみが操ることの出来るこの雷は、打たれればその身は塵を遺すことも赦されず、この世より消え去ります。
頑丈な鬼でさえ。
そこに誰も居なかったかのように一瞬で。
故に鬼ヶ島の鬼は皆、この雷を……刹鬼様を恐れます。
あっ、わたくしは何一つ恐くはありませんわ。
だって刹鬼様が下さるものですもの。
雷だって喜んでこの身で受けましょう。
ドォオオオオンッ!!
その雷が鐘鬼様の足元へと狙い定めたかのように落ちる。
「鐘鬼」
全く温度を感じさせない声で刹鬼様が鐘鬼様を呼ばれる。
「……」
鐘鬼様は答えない。
それさえもわかっているのか、全く気にする様子もなく鐘鬼様を見下ろす刹鬼様が一言。
「うちの可愛い嫁に触れるな」
「「「「…………」」」」
「可愛いなんてっ。いやですわっ刹鬼様!」
きゃーっ!!
「そこ!?」
突然、多鬼が叫んだ。
「「??」」
わたくしと刹鬼様は首を傾げる。
「「どこ??」」
「こんっっの、互い至上主義夫婦!!」
きゃっ。
そんな本当のことを多鬼ってば!!
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