第43話

「ん?オデコでは物足りないか?」



「!?」




なななな何故バレッ



刹鬼様は妖艶にニヤリと微笑まれると……




「ココには風邪が治ってからな」




そう言って、わたくしの唇を撫でた。




「〜〜〜〜っっ」




あああああっ。


どうしてわたくしは風邪なんて引いたのかっ。




「直ぐに治します!!」



「ああ。早くココにさせておくれ」




もう一度撫でられ、フニフニと弄ばれる。




ううう……。


眼の前に刹鬼様が居られるのに、生殺しですわ……。




「ほら、目を瞑って。起きてたらいつまで経っても治らないぞ」




優しい声で諭される。



そうですね……寝なければ。



寝なければ。



でも……




「丁?」



「あの……刹鬼様」



「うん?」



「……」




口を開くも言葉が出ない。




「丁?」




刹鬼様はたくさんのお仕事を抱えてらっしゃる。



それをわたくしの我が儘で滞らせる訳にはいきません。



ただでさえ今、お時間を取らせているというのに。




「いえ、なんでもあり」



「丁」




ジーーッと見られる。


ジーーッと……。



嘘をつくなよ、と。


なんでも話せ、と。



刹鬼様には敵いません。




「寝るまで……寝るまでで良いので側に居てもらえませんか?さ……寂しいので……」




布団で顔半分を隠し、小さな小さな声で言う。



ああ……わたくしはなんて我が儘を……




「なんだ、そんなことか。今日はずっと丁の側に居るぞ」



「えっ!?」



「うん?」



「お仕事は……」



「愛しい妻が苦しんでるのに、仕事なぞ出来るか」



「っっ」




そんな風にキッパリと言い切ってくれた刹鬼様は、布団ごとわたくしを抱きしめた。




わたくしは……本当に……なんて幸せ者なのだろう。




「ありがとうございます、旦那様」




涙目で微笑んでお礼を言うと……




「そんな可愛い顔をするな、襲いたくなる」



「襲っ!?」




良いですよ!!と答えると、怒ったような表情の刹鬼様に、ゴンッと頭突きをされた。




「治ったら覚悟しておけよ?」



「っっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る