第44話

わたくしの両親は一般鬼でした。



両親共朝から晩まで働いていて、夜は朝までグッスリだったそう。



そんなごくありふれた日々。



わたくしが六歳の時にそれは起こりました。



満月の夜ーー。



時空の扉が開き……人間が入ってきたのです。



扉はイレギュラーで、我が家の近くに開いてしまい……



もう一人で寝れるようになっていたわたくしは、その時に……



一人で寝ている時に、人間に見つかり人界へと連れ攫われました。



後に知ったお話ですが、その人間は何度も鬼ヶ島へ来ては子供を攫って売っていたそうです。


鬼の仲間がいたとも聞きました。



まだ刹鬼様が鬼の主ではなかった頃の事で、当時は刹鬼様のように厳しく時空の扉を取り締まってはいなかったそうです。



グッスリと寝ていた両親がわたくしが居ないことに気付いたのは朝で、すぐ当時の鬼の主……刹鬼様と鍾鬼様のお父上に助けを求め……断られたそうです。



『たった一人の鬼のために優秀な鬼を人界にやるわけにはいかない。諦めろ』


と。



泣く泣く家に帰る途中で


『詳しい事を聞かせてほしい』


と、刹鬼様が両親に話しかけてきたそうです。



常々、子供が攫われることを刹鬼様は憂いていたと後に聞きました。



そして自ら捜索隊を結成し、攫われた子供達などを一気に取り戻すと決意した刹鬼様にわたくしが助けられたのは攫われてから一ヶ月は経っていて……



「うぅ……っ。嫌……、嫌だっ。止めてっ」



「丁?」



「止めてっ!!」



「丁!!」




角を折られた後でした。

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