第4話

刹鬼side



いつも視線を感じる。



バレないようにそっちを見ると、必ずその先には妻の丁が居る。



隠れる気があるのかないのか、可愛い顔がいつも丸見えだ。



仕事、仕事で忙しい俺の邪魔をしないようにしてくれているんだろう。




「なんて慎ましい」



「え?」



「多鬼も思わないか?丁は慎ましい」



「……奥様が慎ましい?」



「なんだ?」



「……いえ、何も」




ハハッと笑う多鬼。




「慎ましい人は釘バットなんて持たないと思う」



「ん?」



「いえなんでも」




しかし丁から向けられる視線は深い愛情と慕ってくれる気持ちがたくさん込められていて、くすぐったくも嬉しい。



が、もう少し甘えてくれても、我が儘を言ってくれてもいいんだがな。



大分、年の離れた年下の妻。



出逢ったときは小さな子供だったが、大きく美しくなった。



緩やかに波打つ長い髪は月光のような銀色。


日焼けを知らぬ白い肌。


ツルツルの額から生える青い二角は、左が折れている……。



意志の強い大きな瞳も角と同じ青色。


ツンっとした鼻に小さく柔らかな甘い唇。



何故、柔らかく甘いのを知ってるかって?



夫婦だからな。



成長して、女性らしくなった身体に俺が贈った瞳と同じ色の紬の着物が良く似合っている。



その手にいつも持ってる釘バットさえ、丁の一部のようで可愛く見えてくる。



最高で最強だ。




「……え?」



「なんだ」



「……いえなにも」




ツィーっと多鬼が視線を逸らす。




「……釘バットも可愛いってどういうこと?」

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