第29話

「フッ、ハーッハッハッハッハッ!!」




私、高笑い、のち




「圧勝!!」




血塗れの釘バットを天に掲げた。




「……うっ、ぐぅうううううう」




アンジェラが地べたに這いつくばって呻く。



フルボッコにしたから、もう姿はジャガイモのよう。



でも翼だけは傷一つなく真っ白のまま。



綺麗だからね、傷付けるのは勿体なくて。



毎回、そうやって情けをかけてあげていることに気づいているのかしらね、この羽根つき虫は。





「圧勝って言ったけど、丁様の頭もタンコブがスゲェ……」



「いやでもよ、剣を相手にタンコブって……どういう理屈??」



「地に這いつくばるアンジェラちゃんも可愛い!!」



「高笑う丁様、美しい!!」




外野が煩い。



いつの間にか、私達の周りには見物の鬼達が居た。



私派とアンジェラ派に分かれている様子。



鬼でありながら、アンジェラを応援するとか……。



お仕置きが必要ね?



釘バットを肩に担ぎ、歩き出す。




「ななななななんで、丁様笑いながらこっちに来るの!?」



「バレた!?」



「ひひひひひ丁様っっ」



「フフッ。1列に並んでお尻を出しなさい。叩いてあげるから」




私は肩に担いでいた釘バットを勢いよく素振りする。




「好きでしょ?叩かれるの」



「いやっ、それで叩かれたら、尻がなくなります!!」



「抉れます!!」



「なくなります〜っ」



「なぁーに情けない声を出してるのっ。それでも鬼かっ」



「「「「ヒィイイイイイイッ!!」」」」





















ドカーーンッ!!




派手に何かと何かがぶつかる音。



あら、あちらはまだ決着がついていないのですね。




音のした方には鍾鬼と天使が居るはず。




「貴方達」



「「「「ハィイッ!?」」」」



「アンジェラが逃げないようにグルグル巻きに縛って見張ってて」



「「「「!!」」」」



「逃したら」




万が一にでも刹鬼様の所に行かせたら……




「どうなるか……」




そこまで言ったところで




「お任せをっ」



「命にかえても!!」



「グフッ。アンジェラちゃんを縛れる」



「貴方は外れなさい」



「ええーーーっ!?」




決して、アンジェラの身を案じたわけではない。




「奥様、これを」



「真鬼。ありがとう」




合流した真鬼がキンキンに冷やした氷嚢をくれる。



それで頭を冷やしながら、私と真鬼は鍾鬼様の元へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る