第30話

「真鬼、下がりなさい」



「はい、奥様」




鍾鬼様と天使が戦っている場所に近づいた所で……



戦闘の流れか、大岩が私と真鬼の元へ物凄い勢いで飛んできました。



私は真鬼を下がらせると、大岩に向かって自ら飛ぶ。



私達ほどある大岩。



あれが万が一にでも、家に、鬼に当たりでもすればただではすまないでしょう。



私は鬼の主、刹鬼様の嫁。



刹鬼様が守るものは、私も守るのです。




大岩が目の前にきた時、愛釘バットをおもいっきり振りかぶり、そして振り下ろした。




「フンッ!!」





ガッキィイイイインッ!!




愛釘バットが高い音を立てて触れる。



その触れたところから、ヒビが入っていく。




「ウォオオオオオオオッ!!」




あら、やだ。


私ってば、下品な雄叫びを上げてしまいましたわ。



刹鬼様には聞かせられません。




「ぶっ飛べぇええええええっ!!」




まっ、刹鬼様もおられないので、たまには、ね?




見えた戦闘中の二人へ、その大岩を打ち返してやりました。




「はっ!?」



「うぉっ?!」




見事に鍾鬼様と天使の元へ飛んでいった大岩。



なんとか避けた二人が、バッとこっちを見た。



私は二人を見下ろせる場所に着地すると、そのまま二人を見下ろした。




「チッ!!」




鍾鬼様が盛大に舌打ちをし




「丁ちゃ〜んっ!!」




天使が手を振ってきた。




「名前を呼ぶな、その名を呼んでいいのは刹鬼様。旦那様だけだ」



「くぅ〜。カッコいいねぇ〜」



「鍾鬼様」



「……なんだよ」



「イキって行った割には、大した事ありませんわね」





そう言って、フンッと鼻で嗤ってやりましたわ。

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