第50話
「QaQaさんたちのリスポーン地点ってこの船に設定してるよね?」
「ああ。それはもう済ませてる。あとはお前だけだ」
「オッケー。だったらさっさとやっとくね」
このゲームは船に始まり船に終わる……ってわけではないけど、それに似たスタンスを持っている。
なのでこのようにリスポーン地点を船に設定することで他のプレイヤーがいなくとも問題ないシステムになっている。
大変ありがたい。
ちなみにNPCは登録できない。まあ一つだけの命だしね。ローズはなぜかこの船と“同期”しているとかなんとかで私たちと同じようにリスポーンできるらしいんだけど。
未だにローズがどんな存在なのか、いまいちはっきりしていないところがある。今はうちのマスコットだからいいけど、仮に私たち以外のプレイヤーが手に入れようとしたとき、所有権が移動しないかが心配。
心のどこかで問題ないって楽観的に思っているけど、対策できるんだったらしておきたい。
一応攻略サイトとか軒並み調べてみたりしたけど、まだNPCを仲間にすること自体出来ないって言うのしかなくてちょっと戸惑ってる。
これも私のチュートリアルみたいにシステムエラーとか何かなのかな。
まあ貰えるもんは貰っときましょ。
「んじゃ全員乗ったね?」
「「おう」」
『はい』
『ワン!』
「そんじゃ、出発!」
鉄船以上の広々としたスペースに、2人+1体+1匹が乗り込んだのを確認した私はゆっくりと宇宙船を浮遊させる。
もしかして、初めてこの船を動かすことになるのかな。
「うほおおお!!!」
興奮してきたァ……!
この操縦席やレバーから感じる僅かな振動が心地いい!それにすぐに流れていく景色も素晴らしい!
しかも特にいいのがこの舵!まさか舵輪を設置できるなんて思わなかった!
某海賊船にあるような作りをしていて、しかも使われているアイテムはレイヴンの星でも特に頑丈だった“ラムザの木”と呼ばれる黒い木。暗く年季が入った雰囲気を持ちつつも、どこか頼もしさを感じる。
そんな舵輪をぎゅっと握って─────回す!
この時ほど至福を感じるときはない!
─────アァッッッ!
「ご満悦だな」
『あんな顔するんですね』
「……はあ」
次に行く星はまだ決めてないけど、どっか適当なとこでいいでしょ。
新しい素材が出るところだったらなお嬉しい。
更にここからまあまあな距離にあったらもう嬉しすぎて途中から涙を流してしまいそうだ。
そう考えていると、気づいたらスターリラ近くまで来ていたらしく。
「めっちゃ船ある」
「ほんとだ」
初期の頃、というか初めて私がスターリラに来た時よりも明らかに船の数が違う。というよりこれらの船は多分船着き場からあぶれた船たちだろう。
最近宇宙に船を置いたまま星に行けるようにアプデされたらしいし。
「スターリラは今たくさんのプレイヤーで溢れてるんだろうね。あーあ、適当に素材集めたかったのに」
「あそこには特にいい素材無かったはずだが?」
「え、そうなの?」
「ああ。あそこで手に入る素材は良くてエーテル機構ぐらいだからな。それもドロ率相当低かったし」
「へー」
だったらスターリラに行く意味なんて無いか。
私は舵をぐるぐると回転させて船の行き先をスターリラの先にある星にした。
更にレバーをグッと押し込んで少しだけスピードを速める。
中々に快適な宇宙飛行。船内は適度な重力が働いているためみんなは適当なところに座って思い思いに過ごしている。
「おい、これからどこに行こうとしてるんだ?」
「え?分かんない」
「分かんないって……この方向だと“ミマノソ”に着くぞ?」
「ミマノソ?なにその変な星の名前」
「そこに住むのが一部族だけでその部族でミマノソは“唯一”って意味らしい。その星の中で自分たちは唯一の人間の部族だとかなんとか言いたいんじゃねぇの?別にそこに行っても旨味は無いと思うぞ」
「ふーん」
一部族だけしかいない星……?何それ。世紀末とか何かかな?
それだったらあんまいいアイテムとか無さそう。特にどんな宇宙船を造ろうかまだ決めていない現状、きっかけとして珍しいアイテムを手に入れたい。それを主体に使う船を造りたい。
私はオート運転モードに切り替えて“設計図”を開く。
そしてミマノソで手に入るアイテムで造れる船を検索すると、
「へぇ」
一つ、気になるものがあった。
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