第40話 カナ視点
Side カナ
「
飯さんの双剣の能力でたった今、戦車は全て破壊された。残る脅威はもう残っていない。
「くそっ、なんなんだよこいつら……!」
「同じ人間の癖になんで悪魔の味方をする……!?」
確かに、彼らからしたらレイヴンさんは悪魔そのものだろう。同じ立場だったら私だってそう思うに違いない。
だけど、彼らは自分たちでレイヴンさんというロボットを作って彼に全てを任せた責任を負おうとしていない。
なるほど、ナラナラがあの街に入ってずっと不機嫌な顔をするわけだ。きっと彼女は真実を知らずとも、レイヴンさんの話とあの街を見て直感で感じ取ったんだろう。
本当に、昔から勘が鋭い。
彼らはレイヴンさんに何度も助けてもらったはずだ。まあ今目の前にいる人間はそんな人たちの何世代も後の人間だろうけど、それでも過去の人間がしてきた所業から目を背け、本来英雄と呼ばれるほどの働きをしたのレイヴンさんを殺そうとしているという事実が私には許せなかった。
それにレイヴンさんから話を聞いた後にあの街の住人から話を聞いて、私たちは彼の話の中に一つ勘違いをしていたことに気づいた。
それはあの街にいる住人全員が元々レイヴンさんのいた街に住んでいたという事実だった。
レイヴンさんはあの街は自分を脅威に思った人々が団結して作り上げたものだと思っているが実際は違う。
レイヴンさんがいたあの街もとい、あの国は他国を滅ぼし過ぎた。その結果、残った自国の兵士やロボットたちでは残りの国や恨みを持った滅国出身の人たちを相手取るのは困難だと判断した。
だから国の重鎮たちは決定した─────すべての罪をレイヴンさんに背負ってもらおうと。
レイヴンさんを悪魔に仕立て上げようと。
そして自分たちはあの樹海に隠れ潜み、レイヴンさんを討伐することで今までの恨みを有耶無耶にしようと。
更にレイヴンさんの話の中で出てきた彼のマスターの家族についてもあの街を調べるうちに詳細が分かった。
彼のマスターの家族は、マスターとその妻と娘の三人家族。だがそのうちの二人は実はマスターの上司の手で殺されていた。
そしてマスターである博士にはそれを他国が仕向けたと嘘を伝え、そしてレイヴンさんは殺戮兵器に戻ってしまった。
この国─────バンバリア王国の自作自演によってここまでの惨劇が出来上がってしまったのだ。
これらの情報はあの街の奥深くに眠っていた上にセキュリティも厳重だったから盗るのに少しだけ手こずった。
やはりこれは未来永劫隠したかった事実だったんだろう。
愚かだ。
「くそっ……!」
「せめて悪魔だけでも……!」
「させない」
「がはっ!?」
残り少なくなった人間も構うことなく殺し尽くす。
バンバリア王国が始めた悲劇は、バンバリア王国の住人全員の死でもって完結させる。
レイヴンさんにはまだ彼らを助けたい気持ちが残っているかもしれないけど、正直もう救えない気がする。
私たちが心を鬼にして、彼らを抹殺するのだ。
そうしていると、私たちはいつの間にか敵本陣の大将のところまで来ていたらしい。
「なんで……なんで俺たちが殺されなきゃいけないんだっ!あいつは悪魔で、俺たちが正義のはずなのにっ!」
「少なくとも私たちにとってはそれは正義なんかじゃないぞ」
「ふざけるなあああ!!!悪魔は討伐すべき敵なんだよッッッ!!!使い捨てのゴミの癖に無駄に足掻きやがって!!!あの街を奪還するためにもここで殺すんだ!!!」
そう叫んでレーザー銃を乱れ撃ちしてくるが、私は冷静にアイアンメイデンでそれらを防ぎ、飯さんは剣ではじきながら近づいていき、
「ろくでなしが。レイヴンさんに全て背負わせるわけ、ねぇだろ」
「がっ……!?何故それ、を……!?」
「ふん。自業自得がここまでハマるような奴らを俺たちは見たことがねぇな」
「ふざけ……あの悪魔、は……私たちの……バンバリア王国の、糧…………ぐふっ!?」
「その汚い口を閉じろ」
飯さんが聞くに堪えない言葉を強引に閉じてくれた。正直もうこいつの声なんて聞きたくなかった。
「さ、あとは殲滅戦だ。やるぞ」
「おう」
「く、来るなアアア!?」
「うわあああああ!?」
「死にたくないいいい!?」
それから私たちは敵本陣に残っていた敵兵を全員殺した。
そして最後の一人を殺した時にレベルアップのボイスが聞こえてきて、私はそこでここがゲームの中だということを思い出したのだった。
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