第7話 Q:宇宙船まだ? A:まだ。
「とりま船を作る分だけの鉄骨は揃ったけど」
こうして設計図を開いてみて思った。そう言えばエンジンとかの動力源ってどうするんだろうって。
このゲームでは最初から全ての船の設計図が見れるようになっており、その中で鉄船は下から3番目のランクの船になっている。
これは序盤の船としてはかなり高いのではと思ったんだけど、一番上のランクから数えて、
「……27番目」
つまり船のランクは30段階に分けられていた。
しかしまだサービス開始してから一日……は流石に経っていたけど、それでもまだ一日しか経っていない。それで鉄船が作れるんだったらかなりハイスピードだろう。
そう思わないとやってらんない。
そろそろカナと合流したいし。
「えっと必要なアイテムが……鉄骨×3000と、後はコンクリートと……エーテル機構?」
コンクリートって……随分昔に使われていたものじゃん。でもこのゲーム内のコンクリだったら現実のよりももう少し硬いんだろうなあ。でないと宇宙船に使われないから。
見ればコンクリの入手方法はどうやら簡単そうだし……問題はエーテル機構よね。
私はエーテル機構の文字をタップし、詳細な情報を見る。
【エーテル機構:全ての宇宙船に共通する動力源。中身はブラックボックスとなっており解明するにはそれ相応のレベルが必要。】
そしてその説明欄の下には入手方法が書いており、
【入手方法:機構種の森にて機械震猫もしくは機械震犬の討伐で稀にドロップする。】
「……ふざけるなあああ!!!」
前途多難とはまさにこの事かもしれないわね……。
私は何度目も知らぬ青空を拝みながら、怒りのままに森の中を駆けだした。
・¥・¥・¥・¥・
「ペンチプレスぅぅぅうううああああああ!!!」
『二゛ャァァァアアアア!?』
最後はもうただの叫び声になってしまった私の絶叫が森の中で木霊する。それと同時に目の前の機械震猫の命がバッサリと切り裂かれた。
流石に一日でエーテル機構を見つけることは出来なかった私はこの数日間ゲームに潜っては機械震犬と機械震猫を探してはペンチでぶち殺すと言うのを繰り返していた。
途中から上司への恨みをぶつけようと意識を変えてみたらあら不思議。今まで辛かった作業も楽しい楽しいストレス発散作業に様変わりした。
「あのクソジジイぃぃぃぃぃいいいい!!!」
ほら楽しい。
「これで……何体目?」
最初はロボット犬と猫、そして次は巨大化したロボット犬と猫と相対している私は……このゲームの醍醐味を未だに感じれないでいた。
普通の人だったらすぐにリスタートするだろうけど、私は違う。
きっとリスタートしたら勘違いでここまで進めてきたすべてがパーになってしまう。それだけは絶対に嫌。
だってもうすぐで自分だけの船が出来上がるんだもん!
「エーテル機構の必要数は後一つ……なんでレアドロップ品が6つも必要になるのよ」
文句を垂れ流しながらも、既に5つ手に入れることが出来ていた私は残る一つを手に入れるために、今日も機械震犬と猫を探し回っていた。
最初戦った時よりも更に効率化されたこの動きは、機械震犬を見つけたら1分以内には殺せるようになっていた。慣れと言うのは本当に恐ろしいものよね。
それにどういう訳かキャラレベルを最初の日以来見てみたら、
「……Lv.21」
恐ろしいまでに上がっていた。
より詳しく見てみるとなんと、HPからMP、更にはSTRなども最初の頃と比べて8倍近くまで上がっていた。これはまだステ振りをしていない状態での話だと言うのがまた更に恐ろしい。
あ、そう言えば。前にカナとレベルについて話ていた時、
『やっとLv.10になれたぜ~。ルニはどうだ?私はギリギリトップランカー維持できてるけど』
『私は、まあ……ボチボチ、かな?』
『そうか。もうちょいしたら合流しようぜ。あ、そうだ。チュートリアル終わったらすぐにフレンド申請してくれよ。これが私のIDだから』
『う、うん……ありがとう』
なんて言っていたなぁ……うっ。
い、言えない……!私がLv.21で今トップを走ってるプレイヤーよりもレベルが高いなんて言えない……!
それにどうやらこの星は本当にチュートリアルの星だったらしく、今私が目指しているあの空島で初日に自分の船を作ってそそくさと別の星へと飛んでいくのが普通らしい。
……私まだチュートリアルすら終わってないんですけど!?
「……どうしてこんなことに」
このゲームには勿論サポートAIも搭載しているはずだし乱数調整AIだって導入している。だから普通こんなこと起こる訳が無いんだけど……。
「……はぁ」
私は私で出来る事をしよう。目標はこの星を抜け出して自由を手にする!
「よっしゃ、やってやる─────」
『─────ニ゛ャアアアア!!!』
「ぞぉ……ぉぉぅ」
はぁ。……なんで、なんで、こう、さぁ……っ、いいところでさぁ。割り込んでくるかなぁ……!
「最後まで綺麗に決めさせろよこのゴミ猫がああああああ!!!」
『ニャ、ニャアア!?』
全ての鬱憤と共に振り下ろしたスパナは吸い込まれるように猫の脳天をぶち抜いた。その間、私のスパナを握る手は強く握ったせいで自分の血で染まっていたのだった。
・¥・¥・¥・¥・
「あ、落ちてる」
戦利品を見ると怒りでいつもの三倍しばいた猫から無事エーテル機構を入手できた。良かったです。
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