第17話 

「おい二人とも、そこまでだ」


「あ、まんまさん」


「おうナラナラさん。久しぶりだな」


 二人の間にちょうどいいタイミングで仲裁に入ったのは、最後にやってきた飯さんだった。

 ここまでがいつものセット。


 彼が来たことで二人はその矛を収め、席に座る。


「それにしても、ここに来るまでかなり遅かったじゃねえか」


「しょうがないですよ飯さん。ナラナラさんは未曾有のトラブルに巻き込まれていたんですから」


「そうだよ!それそれ。俺が聞きたかったのはそれだよ!ナラナラさん、何があったんだ?」


 久々に合流した飯さんに事の詳細について聞かれた私はカナにしたのと同じ説明を、今度はQaQaさんたちに話した。

 するとしばらの間皆固まって何も言わなくなった。


「……機械の犬と猫、それを大きくしたエネミー」


「最初に貰ったアイテムがスパナで、大きさを変えれるペンチとドロ率上昇のドライバー……?」


「スターリラを通り越して別の星に……?」


「……聞いたの二回目だけどやっぱ分かんねぇな、ナラナラのしてきた事」


「そうかな?」


「「「「そうですよ(だよ)!」」」」


「うおう」


 みんなが一斉にそう言うもんだから流石に驚いて、食べていたパフェをろくに噛まずに飲み込んでしまった。

 危ないなぁもう。


「……QaQaさん、誰にも聞かれてないっすよね」


「問題ないはずです」


「……これ、結構大事だよな」


「はい。少なくともどこの攻略サイトには載っていない情報でした」


「これ、そのまま誰にも言わない方がいいんじゃない?」


「筑和さん……それは無理ですよ。どうせどこかから漏れる」


「でも知ってんの私たちだけよ?だったら大丈夫じゃない?」


 そう呑気なことを言った筑和さんに対し、QaQaさんが溜息を吐きながら自分のスクリーンを操作し、私たちに見せてきた。


「……これを見てください」


そう言ってQaQaさんが見せてきたのはとある動画だった。そこに映っていたのは、


「あ、私の船だ」


「……もう鉄船まで行ってんのかよ」


「まあ、全く知らない星に行ってたんだからそれくらい驚きはしないぞ。ナラナラはそういうとこ適当だからな」


「カナ?」


 私の船と、それを囲んでいる全く知らないプレイヤーたちだった。


 それにしても彼らは一体何をしているんだろう。

 と思っていると、そんな疑問にサラッとQaQaさんが教えてくれた。


「どうやら彼らはこの船を盗るつもりらしいですよ」


「え」


 まさかの盗人だった。これには思わず体を硬直させてしまう。


「彼らはSSFで三番目の勢力を持っているクラン、“エルミッシオ”ですね。そのクランリーダーは確か動画配信者……だったはずです」


「ミラハッカーですよ、QaQaさん」


「ああそうですそれです。ミラハッカー?というものらしいですよ」


 ミラハッカーと言うと、あれかな?ミラハックって言う動画投稿サイトに投稿する配信者ってことかな?


 その証拠に、確かにQaQaさんのさしている指の先を見れば、


《ランク3の鉄船を手に入れる瞬間生放送!!!!!》


 と言うタイトルが。


「なんで」


「そりゃあ、まだこの星ではランク2の船までしか作れませんからね。それ以上の船があったら欲しくなるのは当たり前ですよ」


「……」


 まあ不用心にあそこに置いた私も悪い気がする。でもそれ以上に奴ら─────



「─────許せない」



「お」


「それは私が6日間かけて作った船だぞ……奪われてたまるか」


「ナラナラさんキレた」


「よくあることじゃない」


「筑和さん。思っても口に出しちゃ駄目ですよ」


 取り敢えず、ここですることは決まった。どうやらこのスターリラにいるエネミーの殆どは雑魚らしいし、既にドロップするアイテムは市場に出回っているようで特に狩る必要もない、と言うのがQaQaさんの話だった。


 ならば、


「さっさと追っ払ってここを離れる」


 人の物を盗んでいいなんてことがまかり通るのならこの星にいる意味はない。さっさと離れて別の星に行った方がいい。


「私たちも乗せてくれるんですよね?」


「勿論です。後で改造します。あいつら殺した後に10分程度で終わらせます」


「流石ナラナラさんですね。そこまで速い整備が出来るのはあなただけです。やはりこのパーティの整備士はあなた以外ありえませんね」


「ナラナラならではの荒業だな」


「やっぱナラナラは凄いわ」


 私は残ったパフェを一気に腹の中に入れ込むと、会計をQaQaさん持ちになるように設定する。


「あ、ナラナラさん?」


「それでは後で。船着き場で合流しましょう」


「ちょっと!?後で請求しますからね!?」


 そんなQaQaさんの叫びを無視した私はすぐにカフェを出て、ローズのいる宿へと走って向かったのだった。

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