第3話 祭りと言ったら熱狂でしょ
彼の言う祭りって、どういう事なんだろうか。
「これほどの人数が一同に熱狂する……これを祭りと言わずしてなんだと言うのですか?魂をゲーム世界に移して、現実の異世界へと飛び込める全く新しいゲーム。その価値はきっとこの先更に上がっていくことでしょう」
「……確かに」
「これ以上のゲーム機がもしかしたら出てくるかもしれない。ですがそれが私たちが生きている間に出てくる保証なんてどこにもないのです。だったら少しの可能性にかけて、この祭りに参加するだけでもいいのでは?別に買ってプレイして、これいいやってなったら売ればいいだけですし」
「成程」
「まあ、私は予約勢なので何も関係ないんですけどね」
興味本位で8万を溶かすのはちょっと怖いけど、絶対に買えるなんて保証がない以上気楽に参加するだけでもいい気がする。
それから私はQaQaさんにいろんな質問をした。彼はゲームに関しての知識はここにいる誰よりも持っている。なので、ゲームを買う時の相談役としてとても助けてもらっている。
そうして話している内に、私の中で少しずつ気持ちが変わっていくのを感じていた。
「じゃあ、買おっかな。買えたらですけど」
「お、いいですね。やっとSTⅠ仲間が出来た」
「またゲーム内で会ったら宜しくお願いします」
「そうですね。その時は同じパーティを組みましょう」
「だったら私も!」
するとその話を聞いていたカナも突然そんな事を言い始めてきた。さっきまでの私たちの話を聞いて興味が湧いたんだろう。
「えーみんな買うの……?」
「筑和さん」
「……なにさ」
「買いましょう」
「嫌だよ!?」
「ほらほら。里カナさんも買うって決めたんですし、このままだと筑和さんだけボッチですよ?」
「……うぅ─────分かったわよ!」
こうして霊厶全員がSTⅠを買う決意をした。QaQaさんは確定で買えるんだけどね。
私たちはすぐに公式サイトをこの場で開いて購入可能時間になるまで待機する。
・¥・¥・¥・¥・
後、1時間を切ってもうすぐと言った時。
「飯さんだけ一人こうしているんですかね……」
「それに比べて私たちは集まって……QaQaさんに至っては確実に買えるから一人クエストに行っちゃったし」
「だったら飯さん呼びます?ここに」
「それは無理でしょ。多分呼びかけても気づかない」
この日だけは殺伐としているこのゲームもかなり穏やかな時間が流れている。
こうしてゆっくり話せているのも久々な感じ。
そう思ったその時だった。
「後10秒!」
その号令が筑和さんから放たれた瞬間、私たちは一斉に画面に顔を向ける。それはいつかのイベント最終日で敵兵最後の一機を撃ち落さんと全員が集中した時のよう。
きっとあの時よりも今の私たちの集中は高まっているだろう。ある種のゾーンに入っているかもと錯覚するほどに。
全員が、自身の全神経をただ一つの“購入手続きへ”ボタンへと向ける。
「4」
私たちはこの瞬間予め決めていた通り、一斉に購入ボタンを連打し始める。画面連打だと確実性が無いので、急遽ゲーム内通貨で購入したゲーム内マウスで連打する。
「2」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ─────
と、全員のマウス連打音がパーティハウス内に響き続ける。すると丁度クエストから帰ってきたQaQaさんがハウス内に戻ってきた。
「お、やって─────」
「0ッッッ!」
「うおっ!?」
筑和さんの叫びとQaQaさんの驚きの声と共に購入ボタンが光り、即座にクリックされる。
私の画面は少しのローディングをしたのち─────
「きったあああああああ!!!」
「うぉっしゃあああああ!!!」
「キタコレええええええ!!!」
三人分の絶叫がこのゲーム内に盛大に響いたのだった。
・¥・¥・¥・¥・
「あ、来てる」
「SSFもね」
無事STⅠを購入できた私たちは今度はSSF内で合流しましょうと約束ををしてログアウトした。ちなみに飯さんは無事購入できなかったようで、霊厶パーティグループに泣いているキャラのスタンプと共に、
『二日ログインしません。泣きたいので』
と言葉から計り知れない絶望を感じれるほどの文面と共に、彼の姿はグループから消えた。二日後は第二版の発売があるとのことなので、彼はそこで買うつもりなのだろう。どうせそこで買ったらまたグループに入り戻すはず。
さて、そんなこんなで無事財布というよりも私たちの口座の数字が寂しくなった代わりに手に入れたこのSTⅠで早速遊ぶとしましょうか。
「二人分SSFあるね?」
「設置はこんなんでいいだろ」
「説明書通りだね。ありがと、カナ」
STⅠは従来のVR機器アーカムのようなゴーグル型とは違い、心臓あたりに“
しっかしこれ……心臓あたりに着けろって言われてもこのままだと胸が潰れて少し痛いな……。
「チッ」
「ん?」
そんな私を見てカナが舌打ちをした。何でだろう。
「それじゃあ入ろっか」
「そうだな」
手動で起動する方法もあるけど、今本体を設置している場所からこの寝ている場所はまあまあ離れているので、起動した瞬間意識が無くなって地面で寝ることになってしまうだろう。
一度アーカムで同じようなことをして全身バッキバキになったのが私の中で少しだけトラウマになっている。
……あの時はめっちゃ痛かった。全身から出してはいけないような音がもう出るわ出るわ……もうあんなことしたくない。
「準備はいいな?」
「うん─────STⅠ、
そして私たちは静かに目を閉じて、意識を魂搬送機に移したのだった。
─────────────────────────────────────
ここまでがプロローグになります!
次の更新は明日の18:00になるので、是非読んでください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます