初ログイン
第4話 チュートリアルいらなくない?
「……うん?」
まず最初に見えたのは何処までも続くんじゃないかと思えるほどの、長い長いトンネルだった。
上を見ればいくつもの光が走って先の大きな光へと集まっているのが見える。
きっとあの光の先にSSFの世界が広がっているに違いない。
……ってことはここでやるのは、
「諸々の設定をすればいいのね」
見た感じ仕様はアーカムの時と似ている。作った会社は違うはずなのに不思議なもんだけど、正直ありがたいよねこういうのって。
私は慣れた手つきでステータスプレートを開く。
そう言えばこのSTⅠもSSFも、それにアーカムも辿れば同じ会社だったわね。だったら仕様が同じなのは当たり前か。
「まずはアカウント名だけど……まあいつもの“ナラナラ”でいっか」
苗字の“楢影”の
と言うか、垢名は単純な方が色々楽だし。
それから次にSSFのキャラクリをし始める。
このゲームの特徴の一つとして、今までコンプラだなんだで禁止されてきた“ゲーム内性転換”がこのゲームから可能になったのがある。
だから廃れてしまっていた“ネカマ”とか“ネナベ”と言うものが長い時を経て復活すると、一部界隈では騒いだりしていた。
私はそんなのには興味無いんだけどね。
「でもQaQaさんはこれを機に“ネカマ”になるとか言ってたし……まあQaQaさんはQaQaさんだし別にいっか」
私はなるべく平凡な身なりにキャラクリを設定する。
目指すは“クラスで3番か4番目に可愛い子”。まあそんなことしなくても結局全プレイヤーは宇宙服を着ないといけないからあんまり意味ないんだけど。
あ、でも胸と足だけは拘りたいわね。
「ようやく出来た……!」
いじってみるとなかなかどうして色んな要素があってつい面白くなって3時間もかけてしまっていた。
なんで人以外のキャラクリが出来たんだろう。素晴らしすぎる。
結局は当初の設定に戻ったけど、結構悩んだ。触手を生やしてみるのもいいかもって思ったりもしたからね。
あ、でも髪の毛はちょっといじった。主に色の部分で。
最初は黒のストレートにしようと思ったけど、いじっている途中でメッシュを入れてもいいかもと思い少し調整した。
その結果、髪に紫のメッシュが入った。
「完璧ね……!」
出来上がったアバターに満足した私はそのまま決定ボタンを押して、
「いざ、SSF!」
スパイラル・スペース・フロンティアの世界に降り立ったのだった。
・¥・¥・¥・¥・
《初上陸!》
私の足がSSF内のとある惑星に降り立った直後、目の前にこのような文字が浮かび上がってきた。と同時に私のストレージにアイテムが入ったと通知が来た。
早速確認してみようと手を動かそうとして、
「えっ!?凄すぎでしょ!?」
今までに感じたことのないモーションの感触に思わず声を出してしまった。
アーカムの時はゲーム内補正として一つ一つのモーションが気持ち軽くなっていた。でもこれは違う。
自分の魂がこのアバターの中に入っているからか、まるで現実で動かすかのような重さがあった。
きっとこの重さもレベルを上げて行けば軽くなっていくのだろう。
ここで私が驚いたのはアーカムよりも重かった、という事ではなく、あまりにもリアル過ぎるのだ。
腕を曲げる、足を上げる、そんな一つ一つの動作に全くと言っていい程違和感が無かった。
それらを確認した私は早速貰ったアイテムを確認する。
「ふむふむ……何でスパナ?」
そこにあったのは何故かスパナだった。私はそれについての説明文を読む。
【スパナR1/Lv.1:宇宙船開発時に用いるアイテム。様々な改良を可能とする。】
その下にはスパナR1のステータスが記載されているけど、基準が分からないから果たしてこれが強いのか分からない。
これがスタート装備なのだろうか。だとしたら結構鬼畜じゃない……?
不安になった私は、すぐに方針を固める。もしこの状態でエネミーにでも遭遇したら絶対に殺されるから、やはりアタッカーのカナが必要不可欠。
「まずはカナを探すところから、よね」
そう決めてからここがどこか知るために地図を広げる。だが─────
「……何この緑だらけの地図」
私のスポーン地点、まさかの森でした。
「……ええええええええ。最初からハードじゃないの……」
まさかの森スタート。果たして宇宙を舞台にと言うゲーム性は何処に行ってしまったのやら。
ま、まあいい。きっとスポーン地点はランダム性を持ったもので、私は少し運が悪かっただけ。
切り替えていこう。
私は歩きながら地図と自分のステータスを確認する。
「この地図を見る限り、街らしき街は見えない。それに私のステータスにはレベルやHPのほかにもMP、STRなどがあるわね……空腹度とかは無いのかしら。それに私の姿……宇宙服じゃない」
でもHPのすぐ下に酸素濃度を示す“OC”のゲージがある。今は満タンである以上ここには酸素があり宇宙服が無くても問題無いのだろう。
「一先ず目指すは人がいる街でしょ。道中何か武器が見つかればいいんだけど……スパナでエネミーをぶっ叩きたくないわ」
私はスパナを取り出し軽く振ってみるけど、これじゃあエネミーを殺すなんて夢物語。
これの役目を果たすときは宇宙船を持ったときだろう。でも……
「無いわよねぇ……こんなところに」
と、そう嘆いた時だった。近くの草むらがガサガサと鳴りそこから犬型のエネミーが出現した。
しかしその姿はどう見ても─────
「ロボット……?」
『ワン!』
え、まさかエネミーって全部ロボットなのかな?まあいいか。こいつの名前とかあるのか気になるけど今はとにかく倒してしまおう。
「はっ!」
『キャウン!?』
唯一の武器であるスピナーで犬を殴れば、機械的な犬の鳴き声と共にアイテムを残して消滅した。
「弱すぎ……」
まあチュートリアルだからだろう、とても簡単に壊せてしまった。そして残ったアイテムを拾ってどういった物なのか確認する。
このゲームで重要なのがこのドロップアイテム。これを集めることで星々を渡る宇宙船を作ることができる。
さてさて、私が今手に入れたアイテムは─────
【鉄骨×3:宇宙船の製造、補強に必要な素材。×3000で《鉄船》の製造可能。】
……いやいやいやいや。
「必要個数多すぎでしょ!?」
これ本当にチュートリアル!?
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