第6話 宿敵撲滅絶対に
『ワオオオオオオオン!!!』
犬殺しのスペシャリストとなった私は、即座に奴の懐に切り込む。ロボット犬や猫を殺しまくった私のレベルはまだ一度も確認していないがきっとまあまあなものになっているに違いない。
だって初ログインした頃よりも体が軽いから。
「死ねやああああああ!!!」
1週間(7時間)分の怨念を込めたスパナの一撃を、ボスワン公の足にぶつける。しかし─────
「硬い!?」
ガキン!と勢いよく弾かれてしまった。想像以上に硬く私は驚きで動きを止めてしまう。
『ワ゛ン!』
「っ!?グッ……!」
その隙に前足が思いっきり体に向かってきて、私は数キロ離れた地点まで吹き飛ばされてしまった。
「痛い……」
ある程度痛覚フィルターは効いているはずなんだけど、魂をアバターに移している以上、それを貫通する精神的痛みはあると説明書にあった。
きっとこの痛みはそれだろう。
だがそんなの気にしている暇なんて無かった。
『ワ゛ォォォオオオオン!』
「うおっ!?」
怯んでいる間に私を踏み潰さんと、上からまるで隕石かと錯覚するほどの巨大な足の裏が迫ってくる。私はこの場から急いで離れるとその直後、踏み込んだ足で生まれた突風によって、体が少しだけ宙に浮いてしまった。でもそのお陰で距離は稼ぐことが出来た。
何とか着地をして更に距離を離し、奴の死角となる場所で身を潜め、どうやって殺すかについて冷静に考え始める。
何より厄介なのがあの足。あれを上から下に振り下ろすだけで私には致命傷になってしまう。だけど─────
『ワオオオオオオオン!』
「いっ!?」
するといきなり奴は大きな遠吠えを上げ始めた。こんなに遠くからでも鼓膜にダイレクトに攻撃してくるとは……近くまで行ったら絶対に鼓膜破れるどころか音波で死んでしまうんじゃ……。
まああれについては考えないようにしよう。
近づいても飛ばないと頭とかに攻撃できないし、飛んだら飛んだできっとそのデカい頭体で突進とかしてくるだろう。それにこうして離れていても鼓膜を刺激してくる。
「あの頑丈な前足から破壊しないといけない……だけど」
破壊する術が、このスパナとあとは─────あ。そう言えば。
「あれがあった」
とあるアイテムを思い出した私は急いでアイテムボックスを開いてスパナからそれに持ち替える。
そして自分のステータスを確認して、
「そう言えばHP回復の仕方分からないわね。まあいっか!これがあれば!」
持ち替えたオールペンチを構えて、私はボスワン公を殺すべく、駆け出した。
このオールペンチ、先の説明文をもう一度見返してみる。
【オールペンチR3/Lv.13:宇宙船開発時に用いるアイテム。レベル×10の強度の加工を可能とする。自由に大きさを変えることが出来る。】
これはスパナと同じように宇宙船を作るときに使う物。しかしその後の文面の“レベル×10の強度なら加工できる”と言う文。私はそれに目を付けた。
強度というステータスは全てのアイテムに備わっているパラメータで、私がせくせく集めていた鉄骨の強度はばらつきがあるが高くとも70だった。
あの鉄骨はあのクソ犬共が落とすアイテムである以上、きっとあの犬共の強度は70前後だろう。
そこからあのボス犬の強度を私は120前後と見なした。
どうして120前後かと言うと、スパナをぶつけた時の感触が、前に興味本位で岩をぶっ叩いた時の感触に似ていて、その岩の強度がこのオールペンチLv.12の時に切断できたからである。
「私の予想が正しければ、このペンチならワン公の足を切れるはず!」
ワン公は頭体がデカいからか、私の素早い動きについて行けていない。そして私を潰すために思いっきり右前足を踏み下ろしたそのタイミングで、私はそこに向かって駆け出した。
そしてオールペンチのもう一つの能力である大きさ変化を使って足を切断できるくらいまで大きくした私は、
「切れろおおおお!!!」
予めペンチの持ち手に繋げていた左右の紐を思いっきり引っ張り、ガチン!と足を切り飛ばしたのだった。
・¥・¥・¥・¥・
「ふぅ、やっと終わった」
あれからしばらくして全ての足を切断した私は、奴のHPが全損するまで必死にスパナで叩き続けた。
そして今、ようやく殺すことが出来た。
このゲームのエネミーはHPが0になると細かい粒子となってアイテムを残し、静かにその姿を消していく。
その通りにこのボスワン公も静かに姿を消すとともに巨大なアイテムを残した。
私はそのアイテムを確認するために一旦アイテムボックスに入れて、概要を確認する。
そして戸惑った。
「おお……何これ」
【機械震犬の鉄骨×100:機械犬の巨大種の体を作っていた鉄骨。×1000で《狂震の宇宙船》の製造可能。】
……ねえ。
「気持ちが揺らぐような情報見せないでよ!?」
こんなの見ちゃったら作りたくなっちゃうじゃない!
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