第37話 カナ視点②

『……皆さん』


「レイヴンさん、遅れないでくださいね」


『─────はい!』


 私たちはレイヴンさんの横に立つ。そうして見えた光景は─────


「おー……」


「これはすげぇな」


「あれってエネミー?操ってるのかしら」


「現代武器だけじゃねぇ、古代武器まで持ってきてやがる」


『ですがあれらの武器は三世代ほど前のものばかりですね』


 数多の操られているエネミーの壁と、その後ろにある大量の戦車と戦闘機だった。

 ざっと数えても万は確実に超えている。


「さて、それじゃあ私たちで殲滅しましょう。指揮は後ろで私が取ります。いいですね?」


「大丈夫っす。レイヴンさんも一応パーティメンバーに登録しときますね」


『ありがとうございます』


「それじゃあ開始の一発は私が撃つわね!」


「筑和さん、派手にやっちまえよ!」


 QaQaさんが急いで後ろの高台へ向かい、筑和さんがガンダインM4に弾を詰め込んでいく。その間私もアイアンメイデンM2にOCを注入して起動させる。


「準備完了!」


『では今からポイントにピンを指すのでそこに撃ってください』


「了解QaQaさん!─────来たァ!」


 バズーカを抱えた筑和さんが低い姿勢を保ちながら、共有マップに刺されているピンの個所を確認し、


「ガンダインM4─────フルバーストッ!」


 そう叫んで引き金を引いた瞬間、猛烈な爆風と共に、敵にとって絶望とも呼べる放物線が目標の地点に着地し─────



─────強烈な粉塵が戦場を支配した。



 いきなり本陣に甚大な被害を与えるような一撃を喰らったのか、彼らの歩みが止まった。


「うっし!」


『……すごい』


『これで20%ほどは壊滅させられましたね。それでは次弾装填をお願いします』


「了解!」


「では私たちも行きましょう」


『はい!』


 その間に私たちは敵の掃討のために動き出す。

 私の盾─────アイアンメイデンはエーテル粒子を鉄の針に変化させてそれを放つ能力を持っている。

 そしてもう片方の手に持っている短剣も同じくエーテル粒子を風の刃に変えて放てるのだ。


 その威力は今まで持っていた武器のどれよりも優れている。なにせこれだけで私の周囲にいたエネミーをほとんど切り殺すことができるのだから。


「ふがいねぇなあ!!!」


「っ!?なんだこいつは!?」


「巨大エネミーをぶつけるんだ!奴の足止めをしろ!」


「脆い脆い!」


 樹海のエネミーは嫌というほど戦ってきたから今の私たちにはそれほど脅威ではなかった。でもあの戦車や戦闘機の強さが未知数である以上、このまま警戒をし続けるしかなさそうだな。


 なんて思っていると、


「放て!」


「っ!」


 早速戦車からの砲撃が私たちに襲い掛かってきた。まあ過去の遺物ともいわれている戦車の火力なんてたかが知れて─────


『避けろ里カナ!それはまずい!』


「っ!?」


 その時QaQaさんの焦った声が耳を襲い、その指示に咄嗟に反応してその場を急いで離れるよりも前に敵の砲撃が私のそばに着弾した。



 ─────瞬間、そこを中心に感じたことのない爆発が巻き起こる。



 その威力は想像以上で私の体はそのまま遠くに吹き飛ばされてしまった。


「ぐっ……!?なんだこの威力!?」


『あれは普通の戦車じゃない……!たかが砲弾程度でこの威力はおかしすぎる!ここまで爆風が来るなんて!?』


 今のでHPが半分も削れた、だと……!?それにここからQaQaさんのいるところまで大体3キロ以上はあるのにそこまで爆風が届いたのか……!?


 咄嗟にアイアンメイデンを砲弾と体の間に入れることができたから死にはしなかったものの、あの砲撃の近くにいるだけで次は問答無用で死んでしまうだろう。


 それだけは絶対に避けなければいけない。


「ヴァアアア!!!」


「チッ!おらあああ!」


 それに加えてこのエネミーの侵攻がうざったい……!数だけは一丁前にあるもんだから殺しても殺してもきりがねぇ……。


 筑和さんのバズーカでの攻撃も効いているが、エネミーはある意味肉壁に近い存在だ。敵は怯んでるエネミーを助けようとはせずそのまま壁として使い果たすだろう。


 命を無駄にするような戦いだが、体が大きいエネミーを使うのは頭がいいと思った。


 あの戦車がこの戦いのカギとなる以上、私たちはあれを早急にぶっ壊さないといけない。


 それにあの戦闘機。さっきから空中からチマチマ撃ってきやがって本当にむかつく。あれの対処はQaQaさんに任せているし見る感じもうすぐ片付くだろうな。


「ふん!」


「ガアアア!?」


「私たちはあの戦車をぶっ壊すぞ!飯さん!」


「おっしゃ来たあ!任せとけ!」


 飯さんがこっちに来るまでに私は彼のために道を作る。


「─────鉄梁地獄アイアンメイデン!」


 思いっきりアイアンメイデンを地面に打ち付け、一気にOCを流し込む。

 直後、アイアンメイデンからエーテル粒子がさっき以上に放出され、地面からまるで道を形成するかのように鉄の針が突き出た。


「飯さん!」


「おうよ!」


 この状態を持続するのはかなり苦しい上に、持続中私は動くことができない。だからこそ飯さんにはすぐに通り抜けてほしい。

 敵からの攻撃が絶え間なく私に向けて飛んでくる。それを私はひたすら耐え続けた。


 あの砲撃でなければ私のHPはそう易々と全損したりしない。


「っ!?」


 だが飯さんが道を走り抜ける前に戦車の第二弾の装填が完了したようで、今すぐにでもそれが飛んできそうだった。


 まずい。砲口の先は私の方に向いている。ここで確実に私を仕留めるつもりなんだ。


「飯さんッッッ!!!」


「─────欄干自操スターレイ……!」


 放たれる─────その間際に飯さんの双剣が戦車の砲口を断ち切り、幾千の斬撃の光が乱れ、瞬く間に戦車はただの鉄くずとなった。


千鋼無残デルバイト……!」


 更に一層双剣からエーテル粒子を放ち大振りで双剣を振り抜くと、そこから壁一つくらい飲み込むんじゃないかと思えてしまうほどの斬撃が敵本陣に喰らい付いた。


「「「「あああああ!?」」」」


「「「ガアアア!?」」」


 霊厶れいでござる所属の最高火力アタッカー─────まんま。彼の真骨頂がここにあった。

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