第36話 カナ視点
「レイヴンさん!?」
「イベントが進みましたか。しかし半年待たないと進まないイベントなんて……」
「とにかくレイヴンさんを追おうぜ!」
私たちは急いで走っていくレイヴンさんを後を追うように家を出る。
いったい彼は何を探知したのだろうか。
彼から前に少しだけ話を聞いた。それはこの街がどうしてこれほどまでに廃退しているのかを。
彼の本当の正体を。
確かに彼を作った人はすべての破滅を望んだのかもしれない。だけどどうして後付けで人間のサポート機能を付けたのだろうか。
きっとそこにこのイベントの攻略のカギがあるはず。私とQaQaさんの意見はそう一致していた。
「レイヴンさん!」
『─────来ないで!』
「「「「っ!?」」」」
外にいるであろう誰かに私たちの姿を見せたくないのか、いつもよりも強めの口調で私たちの足を止めたレイヴンさんは、
『─────もう、ここまでですか……』
そう小さな声で、呟いた。
「レイヴンさん……」
『ここは危険です』
「向こうに何があるんです」
『……』
レイヴンさんの体はロボットだからか結構大きい。だから彼よりも先が彼の背中が邪魔で見れない。
「レイヴンさん!」
『……見せられません。今すぐあの家に戻ってください』
「どうして!?」
『ここから先を、あなたたちに見せたくないのです。これは私と彼らのけじめのようなもの。そんなのにあなた方を巻き込むわけにはいかない』
「ですが!」
『私は、感謝しているんですよ』
「……感謝?」
彼は少しだけ顔をこちらに向けてきた。彼の顔はロボット故に感情の変化で表情が然程変わらない。だが私たちには少しだけ笑っているように見えた。
しかし、感謝とは何だろうか。私たちは特に彼に何もしていないどころか、半年間こっちがお世話になりっぱなしだったというのに。
『そう、感謝です。あなた方の友人であるナラナラさんが初めてこの星に来た時、私を一目見ても怖がることなく、どころかまるで友人のように優しく接してくれました。それはこの長い間ずっと忘れていた、人の温もりというものを思い出させてくれたんです。
そしてそんなナラナラさんが連れてきてくれたあなたたちと何年も一緒に過ごしてきて、私の記憶媒体にはたくさんの思い出が保存された。それが殺りく兵器だった私にとってどれほどの感情を引き出してくれたか……だから本当に感謝しているんです。
こんな私でもこんな幸せを貰うことができた。それだけで、私がここまで存在し続けるだけの理由になったんです。
─────だからここから逃げてください。それが私の願いです』
「そんな!それこそ私たちにはあなたに返しきれないほどの多大な恩がある!それをここで─────」
『二度は言わない。この街から─────出てけ』
「っ!?」
初めて、レイヴンさんの強い口調を聞いた。あれほどまでに温厚だったレイヴンさんがそこまでして私たちにこの先のを見せたくないのだろう。
彼は言った。これはけじめだと。きっとここからの業を自分だけで背負っていくつもりなんだろう。
ここまで一緒にいたんだからわかる。彼は責任感が強すぎるんだ。
だけど─────
「レイヴンさん」
『だから何度言ったら─────』
「この先にいるのは、あの街の住人たちなんでしょう?」
『っ!?』
QaQaさんが前に出てレイヴンさんに敵の正体を言い当てると彼は分かりやすいように肩を震わせた。
私たちは既にある程度の予想がついていた。それはあの街に最初に言ったあの日からずっとこうなるだろうと思っていた。
だってあの街でレイヴンさんは悪魔と呼ばれていたんだから。
「これ程に優しいあなたをこのまま非道な名前で呼ばれ続けるのなんて私たちには耐えることができない」
「そうだぜレイヴンさん!俺たちはあんたの助けになりたいんだ!」
「お願い!私たちも一緒に戦わせて!」
『……でも』
彼の、私たちを巻き込みたくないという思いはとても強固だ。だが私たちは最初から彼の助けになると決めていたんだ。
「レイヴンさん。ここは大人しく私たちの助けを受けてくれや。私たちはあんたに死んでほしくないんだよ」
『……里カナさん』
私たちはアイテムボックスから各々の武器を取り出す。
私は巨大な盾─────アイアンメイデンM2を。
飯さんはダンジョンで手に入れたという双剣─────仁滅/地創を。
QaQaさんは対物ライフル─────HallcusM1を。
筑和さんはバズーカ─────ガンダインM4を。
今から私たちはNPCキラーという業を背負っていく。だけどそんなチンケな業なんてどうでもいい。
─────友人一人を救えるのなら。
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これも読んで応援してくださってくれた読者の皆様のお陰です!!!
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