第12話 ローズってば乙女
「ガアアアア!?」
「弱っ」
バジリスクのようなエネミーをスパナでぶん殴ると、呆気なくポリゴンとなって空気に紛れるように消えた。そして奴のいた場所にはドロップアイテムが。
【バイクスネイクの毛皮:防具制作素材として用いる。滑らかでしなやかだが防御力は無い。】
さっきのエネミー、バイクスネイクってやつだったんだ。へぇ。
正直私はこのゲームにポップするエネミーについて、さっきの奴と機械犬と猫ぐらいしか知らない。
今度カナに尋ねてみようかな。
「ステータス見てみよう」
これでレベルアップしてるとは到底思えないけど、一応。それに今までしてこなかった
このゲームではレベルアップすると基礎ステータスが上がるだけでなく特定のステータス値を上げることのできるポイントが付与される。
そして現在、私の所持しているSPは200を超えていた。こんなにあったらいくらでもいじることが出来る。だけど……。
「どういったプレイングをしていくかで振り方変わるからなぁ。まあ取り敢えず保留で」
私がしたいのは裏方で、整備士志願だった。だからこんな風に前線を張るのは私にとって異例中の異例。だけど、だからと言って今器用さを示すDEXに振ったら振ったで今度は今の状況を乗り越えるのはだいぶきつくなる。
そう言ったステ振りにするのはカナたち霊厶のメンバーと合流してから。
「はぁ。早く船いじりしたい」
本当はそれよりもサーキットをしたい。でもカナ曰くあれは今後のアプデで追加されるものだったらしい。騙された。
まあいいや。取り敢えずこの樹海の制覇を次の目標としよう。未知のドロップアイテムを求めて!
・¥・¥・¥・¥・
「よっと」
『ワン!』
「お、ありがとー」
この星に来てから三日目。レイヴンの家に滞在させてもらいながら私たちはこの樹海の探索をかなり進めていた。
マップを見るとこの“張り裂ける樹海”の踏破率は70%を超えていた。思ったよりも小さい樹海だった。
それにしても張り裂ける樹海って……どういった名前よ。もしかすると残りの30%の場所に何かが張り裂けるようなトラップでも仕込まれているんだろうか。
行ってみようかな。もう出てくるエネミーは粗方片付けたし、どういったもんが出るかもある程度知れたし。
方針を固めた私は、まだ行った事のない樹海の一番奥へと向かう事に。
この三日間でだいぶローズも戦えるようになったしね。もう大丈夫でしょ。なんかずっと私の後を追ってきていたから最初は心配だったけど、次第に自分で考えて行動し始めていた。きっと彼(彼女)には思考性AIが導入されているんだろう。レイヴンと同じもの。
それに感情も備わっているようだし、ローズをただのAIとして見なすのはちょっと違くなってきた。
「行こっか」
『ワン!』
うん、今日も元気が良いね!
私は横にローズを歩かせて残る未踏破箇所を目指すべく歩き出した。
それにしてもふと思った。そういえばローズの性別ってなんだろう。そもそもローズを拾った理由がレアな柴犬に似ていたからで、特に深い意味なんて無かった。だから可愛い以外に興味が無かったけど、流石に性別は知っておかないといけないと思った。
だから私はメニュー画面からローズに関する情報が見れるところがないか周囲を警戒しつつ探してみることに。
するとすぐに見つけることが出来た。
「パーティメンバー詳細……お、カナとQaQaさんの下にあった」
何と現在、私とローズはパーティを組んでいた。いつの間に。もしかして最初会って名付けをしたあの時にしていたんだろうか。
私はローズの欄をタップして詳細情報を見てみる。するとしっかりと性別についても書かれていた。
【性別:女性】
「あ、そうだったんだ。同性だったんだ」
『ワン』
「あ、最初から言ってた?いやいやいや、こんな感じで意思疎通できるようになったの最近からでしょ」
そう、何故か信頼関係が私たちの間で生まれたからか、彼女の意思というか考えというか、そう言ったものが頭に流れてくるようになった。
そのお陰で連携は取りやすくなったからよかったんだけどね。多分だけど、ローズのレベルがここに来て上がったのが原因だと私は睨んでいる。
「お、ここからだね」
なんて考えながら歩いていると、気づいたら未踏破ゾーンの入り口まで来ていた。
私はマップを開きながら一歩を踏み出す。その瞬間マップが今まで隠していた箇所を露わにした。
それから先に進んでいると、マップに思わぬものが出てきた。
「─────……え?なんでこんなところに?」
私はそれを見て、この樹海の“張り裂ける”の意味が少しだけ理解できた。これはとある個人に向けられた名だった。
─────これは彼の心を張り裂けさせるためだけに生まれた樹海。私は目の前に建っているそれを見て、これはあの街が出来た後に生まれたものだと否が応でも理解させられた。
「これは……」
─────滅んだはずのこの星の人間が住んでいる街。それが私の目の前に広がっている光景で、それはレイヴンに対する恨みを込めているように思えて仕方なかった。
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