自分だけの宇宙船を作りたい最強整備士は、無自覚に果ての無い宇宙で殴殺の嵐を巻き起こす
捨負
プロローグ
第1話 運命はいつも画面から
西暦2129年。人が生み出した技術は遂に“人”と言う概念を超えつつある。
現実拡張型眼鏡─────ARの普及が瞬く間に進んだ約50年前から今現在まで目覚ましい発展が続いて来た。
その間にもさまざまな問題─────環境汚染や人権問題、更には戦争なども度々起こったりした。環境問題に関してはすぐに解決できたけど、その直後に第一次ヒト戦争と呼ばれる、AIと人間の本質を問うような戦争が起きたりもした。
そんなのが起こり続けたせいでこの地球は約100年前と比較すると相当ボロボロになってしまった。その為人類は次の居場所を求め始めた。それが宇宙への進出。
人類の逃げ道としておよそ100年前から行われてきた宇宙開発もある程度のところまで進んでおり、インフラなども十分整備されてきたせいで今までできていたスペースサーキットも規制対象となってしまった。結構面白かったのに。
もう我々人間は地球に縛られるような生物ではない。今日も次々と宇宙に向けて旅行する人でここ─────直角高速エレベーターは賑わいを見せていた。
そんな幸せいっぱいな人たちをみて私─────
「はぁ」
「どうした、ルニ」
「……何でもないわよ。久々にサーキットしたくなっただけ」
「あーサーキットかぁ……数年前に規制されたもんな」
「あれが私にとってのストレス発散だったのに……」
「仕方ないだろ。このエレベーターが出来て、宇宙にも次々と空路が生まれて。事故が増えて」
「……あれは暴走族のせいでしょ。何で私たちはそのとばっちりを受けなきゃいけないのよ」
「いや、普通に危ないだろ」
そう言えばつい最近だったか。新たなゲーム機が開発されたって話。
今までのゲーム機と言ったら大きなゴーグルをつけて寝転がって、意識だけをネット上に移して遊ぶ、VRMMOが主流だった
それが出た当時はVRMMOの集大成と言われたりもした。
しかし今回開発されたゲーム機では意識だけでなく、魂そのものをそのゲーム世界に移すことが出来るのだとかなんだとか。
今まで以上の実体験を得られると謳っているそのゲーム機の予約は遂に明日から。しかし私は別に今までのVRMMOで十分だと思っている。
今ハマってるゲームだってやりこみ要素が沢山あって今丁度イベントが始まったがためにかなり忙しくなってしまった。
こんな仕事今すぐ辞めてそのゲームにどっぷり浸かりたい。
私の友達で横で欠伸をしている
「あ、そう言えばルニってあのゲーム機買うのか?」
「あのゲーム機って……ああ、
「そうそう。私は未だに信じられないんだけどな、魂をゲーム世界に移せるって話。今までだってそう言った研究は進められてきて、つい数年前にようやく魂の存在を実証できたばっかりなんだぜ?そんなすぐに技術転用できるんかって」
「でも実際2か月前のゲームショウで出来てたじゃない。それこそ今もめっちゃ高い魂検出器を使ってさ」
「私はそっちが出てきた方が驚いたけどな。魂検出器って今1億以上するんだろ?よくそんなもん持ち込めたなって」
魂の存在があると実証された翌年、そこの研究所と民間企業の共同開発で開発されたのが魂検出器。しかしそれを作るためには莫大な費用が嵩むため、受注生産でしか買う事が出来ない。
更にあと数年で材料が枯渇するとかで来年には生産を止めるんだとか。
故に今では市場に出回っている物全てがプレミアム価格で一番高くて100億を超えるんだとか。
企業側も何とか価格を下げようと努力しているけど、枯渇する材料の代わりになる物を見つけられていないせいかなかなかうまく言っていないらしい。
「あの魂検出器は初期型だったからギリギリ買えたんじゃない?最新型だともう安くて10億超えてるよ?」
「ゲッ、そんなにするのか……恐ろしいな」
「でも用途が限られてるから魂関連の事業者にしか関係ないんだけどね。一般市民の私たちにはどうでもいいことだよ」
「そうだな。それよりもSTⅠだよな。今の推定価格はっと─────へぇ、8万だってよ」
「8万?安くない?」
「まあこんな画期的なゲーム機なんだ、めっちゃ売れることを加味してこんな設定にしたんだろ。いいことじゃねぇか」
「……明日発売で明日売り切れるよね」
8万はかなりお手頃な価格かもしれない。今買っておけば数年で恐らく3万以上は値上がりする……と思う。
私は客がいないことをいいことに、ARを起動させてSTⅠ専用のゲームが無いか調べ始める。
「仕事中のARはあんまよくないぞ~」
「いいじゃん人いないんだし─────お?」
「なんだ、いいゲームでもあったのか?」
「うんうん」
私はカナに今見ている画面を共有する。このゲームは一昔前の宇宙をテーマにしたSFアクションRPG。
このゲームで出来る事は主に宇宙船の整備や戦闘、更にはPVP機能もあったりと盛りだくさんなものだった。
今現在人類は精々太陽系の殆どの惑星へ足を踏み入れることが出来ているんだけど、太陽系の外までは行けていない。その先はまだ未開拓で、未知が広がっている。
このゲームではその未開拓の地に自分の、もしくはパーティやクランの宇宙船で探検をしようと言うのがキャッチコピーになっている。
「結構昔にあったようなゲームだけど……結構面白そうだよ」
「確かに。特にPVPが出来るのはいいな。魂をアバターに移して戦うんだからその迫力も今までとは一線を画すだろうぜ」
「そうだね。それよりも私は宇宙船に乗りたい。大砲撃ちたい。サーキットしたい」
「サーキット?─────ああ、このミニゲームか」
何よりこのゲームでいいところはサーキットがあること!これ以外もうなにもいらない!引きこもってこのゲームをしてもいい!
「─────あ、すみません」
「……はい、どうされましたか?」
チッ、客が来てしまった。
私はすぐに接客用の笑みに切り替え、間の悪い所に来やがった金髪の男の接客をするのだった。
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