第16話 嫌な元上司を粛清したい
「楢影さん」
「あ、はい」
「ここ。直しといて」
「……はい」
「全く、もう少し集中して仕事しなさい?大川さんにまた目を付けられたらどうするの」
「うっ……!?そ、それだけは勘弁なので迅速に取り組みます!」
「よろしくね」
もうすぐ終業と言ったところで上司の
でないとまたあのクソジジイ─────大川に目を付けられかねない。
あのジジイは先に上がっていたセクハラ親父のことで、去年まで私の上司だった人だ。
だから本来であればこれ以上何かされるわけでもないのだけれど、部署が変わった今年に入っても何故か私に執着しており、私が何かしらミスをしたらすぐに自分の部署に戻そうとしてくる。さっさと〇ねクソ野郎。
正直に話すともう既に奴をここから追い出す準備と言うか証拠は出そろっている。でも後一手足りない。奴を更に苦しめるための一手が。
はあ。こんな世の中になってもまだあんな輩がいるなんて思わなかった。そう言った欲はそれ用のAIロボにでも吐き捨てろって話なのにさ。
「はあ」
溜息を吐きながら私は修正する箇所を確認し、パパっとそれを修正する。こういう時AIを使えばすぐに終わりそうなもの……なんだけど、今回の会議はそうはいかない。
「はあ」
もう一度溜息を吐く。
なんで一会社員にこんな重いことをさせるのだろうか。
今回の会議の議題は、宇宙開拓の第二段階突入の時期に関して。
今現在太陽系内にある惑星の殆どに一つ以上人間が滞在できるような施設がすでに設置されている。これは今まで人類が目標としてきた宇宙開拓第一段階の達成を意味しているけど、そこで開拓が一時中断となってしまった。
原因が第一次ヒト戦争。AIロボットのみで世界各地で戦争が起こり、初めはロボットだけの損害のはずがいつの間にか世界中の人間にまで被害が及んだ大事件。
これにより人類の約半数が地球を飛び出し、別の惑星に移住した。
私は悩んだ末に地球に残ることにしたけど、既に私の友人の6割くらいは宇宙で骨を埋める決心をしている。それくらい、人は人を信じることが出来なくなってしまった。
国家と言う概念も殆ど意味を失い、多くの自治区が生まれは消え、現在は国際宇宙連合と言う組織がある意味統治をしている状況だ。
まあある程度の憲法と法律が制定され、皆はそれを守ってさえすれば何をしてもいいような時代になった。
ある意味これに関しては一巡した、とも言えるだろう。
兎に角そんなことがあったせいで人類の生存圏は太陽系で今のところ留まっている。が、今回の会議ではそれを更に広げ、太陽系だけでなく銀河系くらいまで広げようと言う。
「ふぅ、終わった」
って感じのを軽―く書いて、また平筑さんに提出をしてOKを貰った私は終業時間ギリギリでようやく今日分の仕事を終えることが出来たのだった。
・¥・¥・¥・¥・
「あ、ナラナラさん」
「QaQaさん!お久しぶりです!」
「はは、久しぶりと言っても一週間ほどですけどね」
仕事が終わり、さっさとカナと家に帰った私はすぐに晩飯を食べた後二人でSSFにログインした。
そして予め決めていた集合場所をマップで確認してから宿を出た。ローズは一緒にいると目立つから宿の部屋に待たせている。
指定された集合場所へと向かうとそこはカフェだった。中に入ると既にQaQaさんが先に来ていて、カナから彼はネカマになった事を既に聞いていたからすぐに見つけることが出来た。
このスターリラと呼ばれる星には様々な店が立ち並んでいる。道中気になる店に顔を出したりしたら、どれも見たことのないアイテムばかりで中にはステータスを上げる武器なんかが売っている店なんかもあってとても新鮮だった。
金額を見たら今の私ではとてもではないが買えないものばかりだったけど。
だからカフェでも何も食べれないかなと思ったらそうでもなかった。中々にリーズナブルな値段設定でギリギリパフェくらいだったら食べれた。
と、そうやってQaQaさんと時間を潰していると、
「お、ナラナラじゃん。久しぶり」
「えっと……え、筑和さん?」
「そうよ、筑和。やっぱこれ、変?」
「変って言うか、奇抜ですね」
「はぁ……やっぱナラナラもそう言っちゃうんだ」
次にやってきたのは筑和さんとカナだった。カナは筑和さんの後ろを歩いて来ていて、何故かずっと筑和さんの事を引いた目で見ている。
まあ分からなくもない。だって髪の毛がアフロなのに服装が着物と言う一風変わったものだったから。
「なんかキモいですね、筑和さん」
「里カナ?何か言った?言ったわよね?ちょっと表に出ましょうか。その腐った口を叩き潰してあげるわ」
「お?いいぜやってやるよ。その気持ち悪い髪の毛をチリチリに焦がして禿坊主にしてやらぁ」
売られた喧嘩は必ず買うカナはですます口調を忘れていつものに戻り、筑和さんの挑発に乗ってしまった。
まああの二人が喧嘩をするのは毎度のことだからあまり気にしないけど、ここはアーカムのゲームとはまた違うんだから人の目が多すぎる。
と一触即発の空気になりかけたその時、二人の間にガタイの良い男性が割り込んだ。どうやらこの人はネカマに興味は無かったようで、前のゲームと似たようなキャラクリでやってきた。
「おい二人とも、そこまでだ」
「あ、
「おうナラナラさん。久しぶりだな」
彼こそ霊厶最後の一人でSTⅠを初日に買う事が出来なかった哀れなプレイヤーこと
うちのパーティの前衛担当兼切り込み隊長。
一言でいえば─────火力枠。
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