メインストーリーそっちのけで船造る
機械の獣
第47話
前書き
第二章始まりです!
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「さて、今日来てもらった理由、わかるわよね?」
平筑さんと面と面を向けてまず最初に言われたことがそれだった。まあある意味そのために来たまであるからね。
「え、はい」
「……はぁ。何というか、もうちょっと緊張感を持ってほしいわね」
そんなこと言われましても、こっちとしてもだって仕方ないじゃん、って気持ちが強い。
あのダンジョントラップはログアウト不可の措置がされていた。だから出ようと思っても出られなかった。
もう少し気を付けなさいとか、もうめんどくさいからあんたクビね、とか言われてしまったらそこまでだけどね。もうそこらへんは割り切っている。
「まあいいわ」
「え」
と思ってたのに返ってきた言葉は予想に反して私を攻める言葉じゃなかった。どうしてだろう。
「前にあなたに作って貰った会議資料、あったわよね?」
「え、あ、そう言えばそうですね」
確かにあったなぁ。ダンジョンに入る前に作ったっけ。あの時は別に関係のない私になんでと思って愚痴をこぼしながら作った記憶があったけど。
それがどうしたんだろう。
「あれが先方から結構好評だったのよ。お陰でこの会社の事業も拡大したし良い事尽くめ。まあプレゼンした私と里見氏さんがよかったってのもあったんだろうけど、それでも上手にプレゼンできたのだってあなたの用意した資料の内容が分かりやすかったからだしね」
「え、え……え?」
「そのお礼として私が無理矢理ねじ込んで半年の休業ってことで処理しといたわ。今日からあなたは仕事に復帰するってことで、いいわね?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
と、とりあえずよかった……ってことなのかな?
まさかあれが思わぬ評価を貰っていたとは思わなかったけど、これは素直に嬉しい。
その功績は全部消えたけど、無職になる一歩手前だったんだし、それと比べたら全然いい。
もう一回就活したくないし。もうこの企業に骨埋めるって決めてるし。就活怠いし。
「ってことだから、今日からあなたにはまた別の会議の資料を作ってもらうことになったわ」
「あぁ、結局それやらされるんですね」
「しょうがないでしょ。あなた、毎度毎度完璧すぎるのよ。部署の垣根を越えて依頼が殺到してそれの処理に毎回毎回追われてる私の身になってよね。泣く泣くお断りのメールを打つ時の憂鬱と言ったらもう……」
「……さーせん」
そ、それはしょうがないんじゃないかなぁ!?だったら私をフリーにするとかなんかあるでしょ!?
……そこら辺のシステムはよく分かんないからあんま気にしなくていっか。
「あ、それと例のあの人、なんか実家でよく分からない不祥事が起きたとかで退職したわ。ちゃんとあなたが集めたものは回収して有効活用したから安心しなさい」
「その知らせが聞けただけでここに来た価値がありましたありがとうございます」
よっしゃ。
・¥・¥・¥・¥・¥・
「いやぁ、何とかなるもんだね」
「それはお前だけだと思うぞ」
「え?」
「お前の業績を知ってるの私と平筑さん、それと部長以上のお役人さんくらいだ。その全員がお前を引き留めようとふつうあり得ない休業をオッケーしたんだからな。こんな無断欠勤に近いことで失職しないのお前だけだぞ」
「そうかなぁ」
確かにほかの人と比べたら私の作業量とかを見たらほかの人よりも少ないから、同僚とか同期とかには良く陰口叩かれてるし。あいつ全然仕事してないとか全く別の仕事しかしてないとか。
でもそんなこと気にしたことない。だって同期とかと仲良くないもん。あいつら性格一目見ただけで悪そうだったし。
仲良くなれる気がしなかった。
そんなことを思いながら私は依頼された会議の作ってほしい資料内容を確認する。今溜まっている仕事が見たら6つくらいあって納期が明日のものとかあったりした。流石にそれは一つだけなんだけどさ。
だからその一つを今日か明日中に終わらせないといけないわけで。正直今の時間から仕事を始めると確実に徹夜しないといけない。
「覚悟決めるかぁ」
さてと。作ってほしい資料内容は、っと……。えーっと何々。
「……うっへぇ、めんどくさそう」
内容がかなり複雑怪奇で、専門用語ばっかりで頭が痛くなりそうな内容だった。でもやるしかない。幸いにも知ってる用語がいくつもあったからまずは知らない用語を取り上げて調べつつ、同時進行で作業AIにいつものように資料作成のテンプレを作ってもらう。
このAIは私自ら作った特別製のAIだ。これがあると無いとでは作業効率が格段に変わってくる。
テンプレ完成まで4分、か。そこまでは全部の専門用語は取り上げることは出来そう。調べるのはそこから……50分くらいかな。
さ、始めるとしますか。
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