第26話
「おらっ!」
「えいっ!」
ダンジョンに入って二日目。今日も昨日同様ここの出口を探りつつダンジョンの奥へと進んでいっている。
既に私たちは脱出方法はこのダンジョンの攻略しかないと考え始めていた。
と言うのも、
「また物量攻めかよ!」
「ああもう多すぎ!」
『ワンワン!』
一睡もせずにずっと進みながらエネミーを討伐しているせいでまともな思考が出来なくなっているからだ。
もう半分ヤケクソでハンマーを振っている私と、何とか精神を保つために愚痴を吐きながらレーザーソードを振っている飯さん、そして首の痛みから解放されたローズ。この三人の顔が揃って死人のようになっているのがその証拠。
終わらないエネミーの群れ。終わらない闘争。出口の見えない耐久戦。逃げ道なんて最初からなかった。
……ああもうマジでめんどくさいっ!
「マジで気が狂いそうになるなこれ!?」
「もう気が狂ってるでしょ!?はははは!」
「それはお前だけなんだよ!」
最初の遠慮がちな呼び方はもう鳴りを潜め、私は彼から“お前”呼びされている。それくらい余裕がない。
エレメンタルハンマーを振り続けているせいか、少しずつ動きが最適化されてきているのが分かる。
それにこれは使っている途中で気付いたのだけれど、なんとこのハンマー、炎や水を纏う事が出来た。そのお陰か知らないけど、普通に殴るよりもダメージが入るようになった。
「レーザーソードもかなり劣化しちまった」
「ドロップアイテムで代用したらどうですか?」
「碌なもんが無いだろ。あーあ、これ初心者には結構高かったんだけどなぁ」
「いずれ新しいの手に入りますよ」
「それもそうか」
ようやくエネミーの洪水を凌ぎぎった私たちは、この先に進むことを決めた。
もうここにはいたくないと言う気持ちは共通だった。
「お?宝箱じゃねぇか」
「ほんとだ」
すると通路の途中に金色に光る宝箱が突如出現。まあこのゲームにミミックとかはいないからこのまま開けても問題は無いだろう。
一応気を付けた方がいい─────と言う前に飯さんが勢いよくそれを開けた。すると、
「丁度いいのが手に入ったぜ」
彼の手に握られていた者は一対の双剣だった。
先のエネミーの波で彼のレベルは20を超えており、今手に入れた武器は丁度レベル20から装備が出来るようになっていた。
「良かったぜ、これを装備出来て」
「いきなり使いますか?」
「いんや、壊れるまではこれを使うさ」
そう言って彼は双剣をアイテムボックスに仕舞い、代わりにレーザーソードを取り出す。
「そんじゃ、行こうぜ。早めに脱出しないといらぬ心配をかけちまう」
「そうですね」
私たちは宝箱のその奥に生まれたまあまあ長い階段を下り、第二階層へ。
機械チックな壁に飽きてきたからようやくその出口を拝むことが出来てよかった。
「ようやく第二層に入れたな」
「ていうか何層まであるんですかね」
まだ第二層だけど、私は既にどこまでこのダンジョンが続いているのか気になっていた。
今まで出てきたエネミーはバイクスネイク、ゴーレム、ヒュドラ擬き……後は沢山。第一階層だけで驚くほど出てきた。次の階層でも想像を絶するほど出てくるんだろうなあ。
物量攻めは正直嫌い。だって疲れるから。だから早く出たい。
「お、第一階層みたいにまた一方通行の一本道だな」
このダンジョンのコンセプトがもし物量攻めをベースに構築しているのだとしたら、私はすぐに─────
「「「「「「「ヴォアアアアアアア!!!」」」」」」」
「─────叫びたいのはこっちの方よクソガアアアア!!!」
─────そう叫んで駆け出し、
一歩目─────エネミーの群れの目の前まで到達。
二歩目─────右手のスパナを最奥の巨大なゴーレム目掛けて投擲しつつ左手のハンマーで地面を殴る。
三歩目─────投げたスパナを糸で引き戻しながらエレメンタルハンマーの秘められし能力を解放。
四歩目─────全滅。
戻ってきたスパナをしっかりと握りしめながら何十、何百と言うエネミーがポリゴンとなって消えていく。
一匹も残らせることなく、私は滅した。
もうこのダンジョン内でエレメンタルハンマーを使えなくなってしまったが仕方ないだろう。この能力を使ってしまった以上こうなることは分かっていた。
けど、ちょっと困るなあ……。だってもう、目の前に次の階層への階段が見えてるんだもん。
激情に駆られて使ってしまった。ちょっと後悔。
「おい、ナラナラ……あれはなんだ?」
「あれはハンマーの力ですけど」
「……強過ぎね?」
「文句はレイヴンさんに言ってください」
「……レイヴンさんに貰ったのかよ、それ」
飯さんに呆れられたけどまあそれも仕方ないか。だってこのハンマーの力を解放したのは初めてだし。クールタイムは今から三日。その間エレメンタルハンマーはその名の通り精霊の力を使えないどころかただの鉄の塊になる。重いだけの。
もうこれはいいや。アイテムボックスにさっさと仕舞ってしまおう。
「よし!切り替えて先に進みましょう!」
「……もう何でもいい」
ドロップアイテムと最奥の宝箱を二人で回収し終わり、すぐに第三階層へ。今手に入ったドロップアイテムをざっと確認してみても、第一階層のエネミーのものは殆ど無かった。
あの最奥にいたゴーレムでさえ違う個体だった。
エネミーが強くなっている。間違いなく。
どうせさ、次の階層だって物量で攻めてくるんだろう。さっきみたいに一閃全滅、なんてことはもうできない。
持っているアイテムの中に武器はあのハンマーだけだった。まああれも本来の用途は武器じゃないんだけどね。
「んで、そういや宝箱の中は何だったんだ?」
「え?ああ、槍でした」
【ブリュナーグM3:先端の穂先が超微細エーテル粒子の結晶を研いだもので作られている。その為どのような盾さえも理論上貫くことが出来る。更に代償を支払うことで秘めたる力が解放される。】
「スゲーな」
槍─────ブリュナーグの説明を聞いた飯さんは目を見開かせそう呟いた。確かにこれは凄い。先端がレーザーソードのように光り輝き、微振動を起こしている。
SFの世界観ピッタリ。それに比べてさっきの双剣はなんだ。中世の武器を持ち込まないで欲しい。あれはあれでいいけどさ。
「ほい」
「そんな“ほい”で渡さないで欲しいんだが」
「だって私使いませんし」
「でもお前武器ないだろ」
「使い方分かりません」
「……」
しかし彼はそれでも受け取ろうとしなかったので仕方なく私がもらう事に。
絶対使わないと思うんだけどなぁ。まあ一応ってことで。
次の階層は一先ずスパナとペンチを使おう。
「それじゃあ─────」
第三階層へ続く階段を降り切った、その時だった。
「ん?」
「は?」
突如眩い光が足元から私たちの視界を奪い、目の前にあったはずのダンジョンの出口を消していく。
そして次に見えてきたのは─────
「……え」
─────生物不生の地獄だった。
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何と☆100超えました!これも読んでくれている皆さまのお陰であります!
誠にありがとうございます!!!
しかも♡もいっぱいあるし……。いいんですかね?嬉しいです。
これからもナラナラの暴走を見守ってもらえるとこちらと嬉しい限りなので、是非今後も読んでもらえると幸いです!!!
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