第29話 カナ視点
Side カナ
「……何が起きてるんだ?」
ログアウトしてすぐの事だった。私とルニはゲームをするとき、決まった時間にログアウトをすると決めている。だけど今日、決まった時間を過ぎても彼女がログアウトして意識がここに戻ってこなかった。
おかしい。これは確実に彼女の身に何かが起きている証拠だ。ログアウトする直前まで彼女と飯さんは姿を消したまま戻ってきてはいなかった。
そして現在、飯さんとは今連絡が取れたが彼女の行方について、少々不可解なことを言っていた。
『─────ダンジョントラップに引っかかった』
ダンジョントラップ……そもそもこのゲームにダンジョンなんてものがあったなんて。それもあの街に。そのカギをルニは持っていた。
想定外だらけだ。まさかNPCの街にそんなものがあるだなんて。あの空白の地には何かがあるとは思っていたけど。
しっかし、これはどうするべきかね。仮に強制ログアウトなんかしてみたら魂が体に戻ることなくどっかにいっちまった、何てシャレにならねぇ。
それに説明書にも故意に魂検出器を取り外さないで欲しいと書いてある。よほどのことがない限りそんなことは無いように作られているが、第三者が取り外そうものならそれは容易い。
なんでこうも危険なもんを買っちまったのかねぇ。一時の熱狂に飲まれたとは言え……あの時の私やルニは冷静じゃなかった。
チッ、ルニがああいうのに飲まれやすいのは知っていたのに、止められなかった。しくじった。
どうすればいいもんかねぇ。
「思えば……」
このゲームを始めた時からおかしかったんだ。なんでルニだけが別の場所で、チュートリアルも無しに始まったのか。
何で彼女だけ、他の全てのプレイヤーよりも速く進めることが出来ているのか。
そんな彼女は最終的にあのダンジョンに行きつき、ダンジョントラップに引き込まれた。それはただの偶然。どんなゲームにだってトラップに引っかかる可能性はいつだって偶然の元で成り立っているのだから。
でも、でも今回のは。
まるでルニがそのダンジョンに入ることを前提としているかのような恐ろしさを感じる。
……いやいやいやいや。
「考えすぎ、だよな」
あり得ない、な。ルニに限ってそんな事ある訳が無い。彼女だってみなと同じ一プレイヤー。そんな差別をするようなことを運営がするわけがない。
だがもしも、もしものことがあったら……ルニはどうするんだろう。
ま、気にすることは無いか。依然として連絡はつかないままだけど、それはどうやらダンジョンの特性らしいし。きっと彼女は時間を忘れて夢中になっているだけだろう。
……思い返してみれば、何度かルニは約束を忘れて没頭していたことが何度もあったっけか。そうかそうか。
「……あんにゃろう」
絶対、“いいところだから!”とか言い訳ほざいてやってんなぁ……?なんだよ、変な妄想を広げてた私が馬鹿みてぇじゃんかよ。
くそったれが。
私だってなぁ、もっとやりたいんだよ。もっと入っていたいんだよ。だがこの決まりを守り続けてきた。だって決まり事は守るもんだろ?特にルニと決めたルールだ、破るなんてことは眼中になかった。
だから私はルニと違ってこの決まりを一度たりとも破ったことはねぇ。
しかしルニはどうだ。こいつは何かある度にルールを破っている。
「そうか、お前がその気なら私だってなぁ……!」
ぎゃふんと言わせてやる。レベルが高いからって調子に乗りやがって。
次戻って来た時PVPでぼっこぼこにして強制的にルール厳守を徹底させてやる。
そう決めた私は再度SSFに潜り直して、ルニに追いつくために先程の樹海でレベル上げに没頭するのだった。
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