第27話 大会へ向けて

 テオドラに指輪を頼んでから一日が経過し、昼食後にユリアン達は再びテオドラの元を尋ねる。

 テオドラは鉱山へ行ってしまったらしく、その変わりにマルティナが指輪を預かってくれていた。


 「ユリアンの旦那! ホラ、これが指輪だ」

 「ああ、ありがとな!」


 「ん-、一応だな、あんまり言いたくはねえんだけど……」

 「ん? どうした?」


 「本命はアンネの姉さんなんだろ?」

 「ああ、言いたい事はだいたいわかった。 俺も分かってるんだけどな。

 成り行きとか色々あったんだよ。

 まあ、無責任な事をするつもりはない…… つもりだ」


 「そうか。 わかってるなら別にいいと思うぜ」


 マルティナの言いたい事も分かる。

 アンネが居るのに、指輪なんて送るのは俺もちょっとどうかとは思う。

 まあ、俺にはリンネもいるし、もう後には引けない。

 全員幸せにして見せる! ユリアンは少し罪悪感を感じながらも、そう覚悟を決めていた。


 指輪を持って、ユリアンとアンネは再びアリエッタの元を尋ねる。


 「よく来たな。 今日はなんの用だ?」

 「俺がこの前渡したやつ、まだ持ってるか?」


 「持っている。 あれが必要なら持ってくるが、どうする?」

 「ああ、持って来てくれ」


 アリエッタは自室からユリアンから受け取ったラリエットを持って戻って来る。

 そのラリエットをユリアンが預かり、持ってきた指輪に通し、以前と同じようにアリエッタの首につける。

 アリエッタは以前の時の様な反応はせず、無表情のままユリアンを見つめていた。


 「アクセサリーとか好きじゃないと思うけど、俺は悪くないと思うぜ!」

 「そうか。 ユリアン、手を見せてくれ」


 手を見て何をするのだろうと、ユリアンは思ったが、特に気にせず両手を手のひらをアリエッタに見せると、アリエッタは右腕を両手で掴み、握ったり指を絡ませたりして遊んでいた。


 しばらくすると、アリエッタは翼をパタパタと揺らしながら、二階の部屋へと入って行った。

 アンネの話しでは、その部屋は寝室なので、様子を見にアンネもその部屋へと入って行く。

 

 またしばらくして、アンネが戻ってくると、鼻血が出ており、ユリアンの心配をよそに、とりあえず村の広場へと戻る事になった。


 アンネは珍しく、真剣な面持ちでユリアンに尋ねかけた。


 「ユリアン…… 私は少し、どうしていいのかわからなくなってしまった」

 「……何があったんだよ?」


 「魔王様はあなたに、三日ほど顔を見せるなと言っていた」

 「ええ? 俺、なんか嫌われる様な事したのか?」


 「その逆で、三日間はユリアンの顔を真面に見れないらしい」

 「えっと、アリエッタってそんな乙女チックな性格だったか?」


 「性格云々と言うより、経験がなく、あまりに純粋と言うか、無垢と言うか……。

 もしかすると、恋愛などに関する知識は殆ど無いのかもしれない」

 「パッとしない言い方だな。 何か変な事言ってたのか?」


 「恋人握りをしてしまったから、子供が出来るかもしれないと言っていた」

 「いや、流石に10000年以上生きてて、それはないだろう。 俺達に子供作れって言ってたし、知らないわけないだろ?

 それに、ノアとは8000年前に…… ああ、どういう関係かまでは知らないな。

 でも、恋心は抱いていたはずだし、何かはあったんじゃないのか?」


 「そうね…… ちょっと魔王様の所へ行ってくる」


 そう言い残し、アンネはユリアンを置いてアリエッタの元へと行ってしまった。

 なんとなく、当分戻ってこないだろうと思ったユリアンは、近くにいた魔族のデライアの元へ向かうと、デライアはユリアンに気が付き、向こうからも歩いて来た。


 「丁度良かった。 村の事でやっておかないと困る事がある」

 「困る事? 俺に出来そうな事があるなら、任せとけ!」


 「うん、この村は魔王様によって結界とかも張ってあるし、外からの侵入者なんてまずありえたない」

 「それは初耳だな。 俺には結界も張っている様には見えないんだが?」


 「村の人間には効果がないし、感じない。 たぶん認識阻害系の結界だから、外から誰かが来てもこの村自体が見えないし、通ろうとしてもどこか別の方向へそれていくはず」

 「そう言う結界か。 それで、この村でやっておかないと困る事はそれが何か関係があるのか?」


 「実質この村の安全度は高い。 けど、いざ攻められた時を考えると、防衛力は殆どない」

 「なるほど、いざって時の為に、防衛力の方もどうにかしときたいってわけか。

 一応、俺もいるし、魔族のみんなも戦えるだろ? 有事の際にはアリエッタも来てくれるだろうし、戦力は十分あるんじゃないのか?」


 「それだとロマンが無い。 もっと、特別なのがいい」

 「ロマン? 特別なのがいいって言われても困るな。 ゴーレムとか、奴隷を警護兵として雇ったりは駄目なのか?」


 「人は駄目。 敵が来る事は殆どないから、ほぼただ飯ぐらいになるだけ。 ゴーレムはなかなか良いけど、特別感が皆無」

 「なるほど、デライアのやりたい事がなんとなく分った来たぞ。 俺は魔法を使えないし、この村で最も優れた守護者ガーディアンを決める大会でも開いてみればいいんじゃないか?」


 「うーん、それじゃあ、採用で」

 「分かった! 大会は一か月後。 優秀な守護者ガーディアンを作った者には欲しい物でも言ってもらって、俺がそれを用意するって感じでいいか?」


 「それでいい」


 この村の娯楽は限られているし、大会を開くのはみんなにとってもいい刺激になるだろうとユリアンは思った。

 問題点としては、参加者が集まるかどうかであったが、ユリアンが声を掛けると、エルフ、ドワーフ、マーメイド、魔族全員が参加する事となった。

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帝国に復讐を誓った勇者。魔王と手を組み、王族を滅ぼす!(仮) ジャガドン @romio-hamanasu

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