第24話 魔王対魔王
アリスは回り込んだユリアンに向けて魔法を放つ。
ユリアンの記憶にあるアリエッタの魔法と似ているが、威力も速度も劣っており、ユリアンは楽に躱す事が出来た。
それでも、直撃すれば即死である事に変わりはない。
魔法を交わしたユリアンにノアが斬り掛かる。
剣の腕ではまるで歯が立たないので、ユリアンにとっては現状、ノアの方が厄介な相手となっている。
力任せに剣を振っても、簡単に受け流されるので、ユリアンは一度距離をとり、態勢を立て直した。
すると、二人の助っ人が助けに来てくれた。
一人は荷物を運ぶのが得意な魔法が使える魔族のアンブリース。
もう一人はバニーガールみたいな姿のジュリア。
アンブリースが荷物を運ぶときにも使っている魔法を放ち、ノアはそれを簡単に躱す。
ノアが魔法攻撃に注意を向けているので、ユリアンはその隙を突き、肉薄する戦いを挑んだ。
この状況でもノアには余裕がある様子で、ユリアンの攻撃に対して、倍以上の手数で反撃をするが、何故かグラついて大きな隙を見せた。
ユリアンは、この絶好のチャンスを見逃す事なく、剣を突き出すと、ギリギリの所でノアはそれを防いで躱したが、腕に大きな傷を負う。
ノアは微笑むの止め、ユリアンに攻撃すると見せかけた後、急に方向を変えてジュリアの方へ突撃し、攻撃を仕掛けた。
ジュリアは垂直に飛び跳ね、天井を蹴ってノアから距離を取る。
ジュリアが戦えるのか疑問に思っていたユリアンは、ジュリアの跳躍力に少し驚く。
そして、何が起きたのかは分からなかったが、ノアはいつの間にかダメージを受けていた。
こっちが押していると判断したユリアンはそこからノアの、反撃に怯む事なく攻撃を仕掛け続ける。
しかし、アリスの魔法によって状況は一変する。
アリスを中心に、強力な魔法の弾が無差別的に放たれた。
エルフ達は結界を張ってアリエッタとアンネを守ってくれている。
魔族とエルフは全員そこにいるので無事な様子をユリアンは確認出来た。
だが、ノアと戦っていたアンブリースとジュリアは大きな傷を負い、アリスの魔法でユリアンも回避に専念していたので、大きな隙を作ってしまっていた。
ノアはこの機を逃す事なく、エルフ達の方へ飛び込んで結界を剣の一振りで破壊する。
更にアリスの放った魔法により、ユリアン達は窮地に陥った。
リンネは強力な魔法で反撃して、アリスを吹き飛ばす。
しかし、奥の部屋から再びアリスが現れた。
アリスが再び魔法を放つと、回避できなかった者から次々に致命傷を負っていく。
単発で出す魔法と比べれば威力が低いものの、直撃すれば大きな傷を負う。
ユリアンがそんな事を考えていると、アリスは単発の魔法をアリエッタの方に向けて放つ。
三人のエルフとジルペットが防御魔法を発動させ、なんとか一撃を凌いだ。
しかし、あまりに強力な魔法を防いだ四人はその場でぐったりと倒れ、ユリアンも隙を突かれ、ノアから致命傷を与えられていた。
デライアは降参とばかりに、何処から出したのか分からない白旗を振っていると、アリスはそれに構わず、アリエッタに向けて魔法を放つ。
デライアとアリエッタに魔法が直撃し、二人は消滅するが、アリスはキョロキョロと部屋の中を見回していた。
ユリアンはノアとの戦闘を続けながらも、アリスの行動を見て、まだアリエッタが生きている事を確信し、ノアへの攻撃を続けが、アリスがユリアンに向けて複数の魔法を放ち、ユリアンが倒れる。
「ノーア! アリエッタが隠れてる! 探すの手伝って!」
「探すも何も、あの状況で遠くへはいってないだろうし、穴でも掘って隠れてるんじゃないのかな?」
アリスがその言葉を聞き、白旗を振っていた魔族の女が立っていた場所が不自然に盛り上がっている事に気が付き、そこを魔法で攻撃すると、大きく床が
アリスはすぐ魔法を放とうとするが、それを止めて後退りを始めた。
なんと、アリエッタが平然と起き上がり、黒い衣を
それは徐々に大きくなり、やがてユリアンの知る魔王の姿へと変貌する。
アリスはノアの方を見て言う。
「なんでアリエッタが動けるの! 剣刺したって言ってたじゃない!」
「僕は確実にアリエッタの体をこの剣で貫いた。 でも無事に動けるって事は…… 僕達はアリエッタの作戦に
「なんでそんな呑気なの! なんでなんでなんでなんで! 逃げないとアリスやられちゃう! ノア! 結界をどうにかして!」
「あの結界を打ち破ってたら僕の剣が持たないし、結界は一つだけじゃないんだ。 僕達の負けだよ」
「そんなの嫌! アリスは負けないの!」
アリスは死者達を召喚してアリエッタに
「どうして…… あの三人はアリエッタを封じた事があるんでしょ! なんですぐにやられちゃうのよ!」
「アリエッタを封じて、唯一生き残ったのがそこで倒れているユリアンなんだ。
だから、そこの彼が頑張ってアリエッタを封印したんじゃないかな?」
「じゃあユリアン殺して! アリスがそのお兄さんを使ってアリエッタ倒す!」
ノアが動き出した瞬間、アリエッタは魔法を放ち、ノアを牽制する。
一歩でも動けば殺されると判断したノアは手を上げて一歩下がった。
そして、アリエッタが「おい」と声を掛けるとアリスは「ヒッ!」と小さく悲鳴を上げて後退りを始めた。
「よくも我の男を痛めつけてくれたな、アリス」
「アリエッタの男? ノアの事? ごめんなさい、ノアなら返してあげるから私の事許して」
「そんな男の事は忘れた。 我の男はそこで倒れているユリアンだ」
「嘘でしょ? そんなはずない! だって今だってノアの事が好きなんでしょ?」
「そんなロクデナシで甲斐性もない、女々しい男の事など、我はどうでもよくなった。
我はユリアンを信じて、お前がこの場から逃げ切れない程消耗するのを待っていた」
「信じていた? そんなの嘘でしょ? アリスがその気だったらその男は一瞬で葬っていたわ!」
「その男と真正面から戦った事のないお前には分からないだろうな。
我には全てわかっていたぞ。 お前が魔力の消耗を抑えながら戦い、無駄な魔力を消耗しつづける事、ユリアンが諦めずにお前を徐々に追い詰めていく事、そして、ユリアンはお前を消耗させるだけの仲間を募って我に繋いでくれる事もな」
「そんなの…… 全部運が良かっただけよ、じゃあノアは? ノアの事は知らなかったでしょ!」
「アンネ、アリスに説明してやれ」
「はい、魔王様。 ノアと言う剣士の事はあなたを偵察をしていた時に、グルタークの歴史にある、その剣の事と共にすでに把握していた。 この結界は私が魔王様の命によって、結界を維持する装置を城の至る場所へと埋め込んでいる。
その装置は、魔王様が自ら魔力を数百年かけて蓄えて作ったものなので、魔王様の魔力は殆ど結界の維持に消耗されてない。 戦いが始まった時にはすでに、勝敗は決している」
「そう言う事だ、アリス」
「剣で貫かれても平気だったのも対策済みだったと言う事?」
「そうだ、理解出来たか? アリス」
追い詰められたアリスは「それじゃあ、仕方ないわね」と呟き、不敵な笑みを浮かべた。
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