第10話 村の日常と兎人の妖精
ユリアン達が村の開拓を初めて三日目。
マーメイド達が魚や藻類、エルフと獣人は森で鹿を狩り自生している野菜や果物を、ドワーフ達は建材として使える上質な石や、生活で使える金属の調理器具や食器などをユリアンに献上した。
ユリアンは感謝の言葉を伝え、早速アンネが人族の二人を連れて、調理する準備を始める。
アンネはドワーフの持って来た石材を使い、石のグリルを作り、街から持ってきた香辛料とエルフ達が取って来た果物などを使ってソースを作った。
そして、グリルに火をつけ、みんなでバーベキューを始める。
特に挨拶などなくていいと思い、ユリアンは「いただきます」と言って焼いた鹿肉を口に入れようとすると、全員がユリアンに注目している事に気が付いた。
「別に、俺が一番に食べる必要はないんだぞ?
みんな好きに食べてくれ。 ああ、一応乾杯の音頭だけさせてもらおうか」
ユリアンが大きな声で「カンパーイ!」と声をあげると、みんなも一緒にコップを高くして「カンパーイ!」と続けて声をあげた。
皆が料理に手をつけると、リンネが「べらぼーにうめぇ!」と歓喜の声をあげ、魔族仲間達とともにはしゃぎだす。
ユリアンは口いっぱいに頬張りながら次の串を手に取り、アンネはみんなの肉や野菜を焼きながら、少しつづつまんで食べていた。
ユリアンは他のみんなにも目を向ける。
ドワーフ達は食事に満足はしているが、お酒が欲しいらしく、アンネにお酒の作り方を伝授している。
他の奴隷達も食事を楽しんでくれている様だ。
マーメイドは地底湖で十分な食事が出来るので、ここにはいない。
食事が終わると、それぞれが持ち場へと戻り、各々のやりたい事に取り掛かった。
ユリアンも色々とやりたい事はあるが、エルフ達の様子を見に、森の奥へとやって来た。
村から
住処となるのは木の上にあるツリーハウス。
すぐ近くには小さな畑も作ってあった。
ユリアンが呼びかけると、ツリーハウスの中から三人のエルフが出て来て、ユリアンの前へ飛び降りてくる。
少し遅れて獣人の女の子も降りてきた。
「お呼びでございますか? 主様」
「ん? 落ち着くとそう言う話し方なんだな」
「この間はお恥ずかしい所をお見せして申し訳ございませんでした。
この森があまりにも魅力的だったので、つい興奮してしまい、あの様な感じになってしまいました」
「俺は別に構わないけどな。 獣人の子も一緒に暮らしてるんだな」
「はい、ああ、この子は獣人ではないですよ」
「兎の獣人じゃないのか?」
「その様に見えますが、実は私達と同じ妖精なんです」
「エルフって妖精なのか?」
「はい、エルフは種族としては妖精です」
「それは驚きだな」
「人間しゃん、人間しゃん、今日は森へ何しに来たの?」
「お前達の様子を見に来たのと、森を探索しようと思ってな」
「たんしゃく? ジュリアも連れてって!」
兎妖精のジュリアはピョンピョンと飛び跳ねながらユリアンの周りをクルクルと回り始める。
「ああ、構わないぞ。 お前はジュリアって名前なんだな。
そう言えばエルフ達には自己紹介とかもまだだったか。
俺はユリアン、魔王アリエッタに仕える剣士だ今後ともよろしくな!」
「私はエステル、魔法が得意です。 よろしくお願いします主様」
「私はイザベル、弓の腕ならこの中で一番だ。
「ん-っと、雑用が得意。 名前はミレーユ、よろしく」
自己紹介も済んだとこで、エルフ達に別れを告げ、ユリアンはジュリアを連れて森の奥へと進む。
森の奥は、外周でよく見かけた針葉樹の木だけでなく、広葉樹なども生えている。
耳を澄ますと小鳥の声や、風に揺れる木々の騒めきが聞こえ、木漏れ日は暖かく、森が迎え入れてくれているみたいにユリアンは感じた。
「色々な動物がいるな」
「鳥しゃんも、たくしゃん、いるでしゅ!」
「鶏なんかもいるのか?」
「ええっと、似た様な鳥しゃんならいるでしゅ」
ユリアンはジュリアと会話をしながら、更に森の奥へと進み、小さな湖を発見する。
「結構深そうだな。 結構歩いて汗もかいたし、ひと泳ぎしてるみるか」
「人間しゃん!?」
ユリアンが服を脱ぎ、全裸になるとジュリアが驚いた声をあげるが、ユリアンはそれを気にする様子は無く、バシャバシャと湖の中を泳ぎ始めた。
「気持ち良いな! ジュリアも一緒に泳ぐか?」
ジュリアは恥ずかしながら服を脱ぎ、ゆっくりと湖の中へと入って行き、不慣れに手足をバタつかせながら、浅い場所でユリアンの泳ぎ方を見て泳ぐ練習をする。
殆ど溺れているのだがユリアンの目には、ジュリアが水遊びを楽しんでいる様に見えていた。
しばらくして、泳ぐコツを掴んだジュリアが、
ユリアンの目にも溺れている様に見えたので、ジュリアンの体を抱いて浅い場所へと連れていく。
「ジュリアはもしかして泳げないのか? 無理して俺に付き合わなくてもいいんだぞ?」
「人間しゃん……」
ジュリアがモジモジしているので、ユリアンはジュリアが泳げないのを恥じているのだと思い、手を引きながら水面をスイスイとゆっくり泳ぎ始める。
ユリアンはジュリアに水に浮かぶ練習をさせているつもりであったが、ジュリアはユリアンが手を引いて水面でスイスイと泳いでるので、エスコートされて踊っているのだと感じていた。
「人間しゃん……」
「怖いか? 大丈夫、絶対に手を離さないからな」
ジュリアは顔が熱くなり、水面に顔を埋める。
そして、ユリアンの傍へ行きたくて足をバタつかせた。
「おっ! 息継ぎも頑張ってるし、上手だぞー!」
「人間しゃん! 人間しゃん!」
「よしよし、こっちまで来れたなー。 可愛がってやるぞー」
ユリアンはジュリアを抱き上げて、首やお腹周りを撫でるとジュリアは息を切らし始める。
その様子をみてユリアンは泳ぎ疲れたのだと思い、湖からあがって自分の服を使ってジュリアの体を拭く。
「まだ乾いてないけど、水気は取ったし歩いているうちに乾くだろう」
ユリアンは濡れたままの服を着て歩き始める。
泳いだせいか少し小腹も減って来たので森の探索をやめ、ユリアンは村へと戻る事にした。
村へ戻ると、みんなが頑張ってくれたおかげで、家具や寝具なども完成している。
これで魔族の街へ戻る必要もなくなったと、ユリアンはアンネから報告を受けた。
そして、何事もなく一日が終わり、広いベッドの上で横になる。
ユリアンを挟む様にアンネとリンネも横になり、三人は飽きるまで行為に及び、裸のまま眠りについた。
ユリアンは違和感を感じ、深い眠りから目覚める。
誰かがユリアンに
こんな事をするのはリンネだろうと思い、ユリアンは目を擦ってその正体を見て思わず息を飲んだ。
「ジュリア!?」
「人間しゃん、人間しゃん!」
ジュリアは「もっと、もっと」と言ってせがんで来る。
その姿はユリアンの目に愛くるしく映り、そのまま果ててしまった。
ユリアンは人に近い姿をしているとは言っても、全身毛に覆われている種族との行為をしてしまった事に、軽いショックを受けていたが、まだまだ甘えて来るジュリアを受け入れ、そのまま三回戦する事になった。
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