第14話 新たな奴隷を求めて

 朝食を取った後、ユリアンがいつもの広場へ行くと、人族の二人がいた。

 丁度二人と話したいと思っていたので、ユリアンは話しかけてみる事にした。


 ユリアンが「おはよう!」と声を掛けると、二人は少し驚いた顔をして、ユリアンに「おはようございます」と挨拶を返す。

 

 「忙しくてあまり話す機会が無くて悪いな」

 「滅相もございません。 どうか、お気になさらないでください」


 「そう言う訳にもいかない。 アンネが二人は働き者だって褒めてたしな」

 「そう言って頂けると幸いです」


 「二人の事を教えてくれるか?」

 「はい、私はライラと申します。 歳は二十歳で大した特技などは御座いませんが、裁縫や家事などは一通りできます」


 二十歳にしては落ち着いた雰囲気のライラ。

 背中まで伸びた真っ黒な髪の毛に、鋭い目つきが特徴的な女性。

 家事が一通りできると言う事なので、引き続きアンネに面倒をみてもらおうとユリアンは考える。

 

 「私はロラです。 歳は16歳で、特技は……特にありません。 でも動物が好きなので飼育するのは得意です!」


 ロラは赤髪のショートヘアで、素朴な雰囲気の女の子。

 飼育が得意なら家畜の世話を頼んでもいいかもしれないとユリアンは思った。


 「ありがとう。 この街での不満とか、何かやりたい事とかはあるか?」

 「充実した毎日を過ごす事が出来ているので、不満などございませんが……」


 「言い淀む必要は無い。 なんでも言ってくれ」

 「人肌恋しいといいますか、欲求不満と言いますか…… 私も旦那様に抱かれてみたいと……」

 「私も旦那様に喜んでもらえるならって思ってます!

 アンネ様からお聞きしました。 旦那様が色々な女性と行為を行っていると」


 「その通りなんだけど、人族の女の子とはしない事にしてるんだ」

 「それは…… どういった事情がおありなのでしょうか?」


 「俺が魔族や別の種族の女の子とする事になったのは成り行きだったり事故みたいなものだったんだ。

 アンネとリンネに関しては妻として愛してるんだけどな。

 それで、人族の女の子としない理由なんだけど、俺には人族の女の子に一人だけ凄く大切な人がいるんだ。 だから他の人族の女の子とはしない。 理由はそれだけ」

 「そうなんですね……」


 ライラとロラは少し残念そうな顔をする。

 この村には娯楽などもないので、流石に少し可哀想だなと思ったユリアンは二人に「任せろ」と言って、ある行動を取ることにした。


 ユリアンは自宅に合った万能薬の試作品を持ち出す。

 これは、アリエッタから万能薬の作り方を教わり、試しに作ったものである。

 それを持って、アンネに頼んでベチルカの街へ行く。


 真っ先に向かった場所は薬師の店。

 大きな店は避け、個人で経営してそうな小さな店を探し、見つけて中へ入ると「いらっしゃい」としわがれた声の主人に声を掛けられた。

 ユリアンは主人の目の前まで行って話しかける。


 「一つ聞きたいんだが、薬の買い取りは出来るか?」

 「小さい店だし、そう言うのはやってないんだけど、どんな薬だい?」


 「万能薬だ」

 「万能薬ねぇ、滋養強壮系の薬かな?」


 「たぶんそう言う感じだが、万病にも効果があるはずだ」

 「あるはずだって言われてもねぇ……」


 「間違いなく効果はある」

 「ちなみに、いくらくらいで買い取らせてくれるのかな?」


 「大金貨1枚だ」

 「はっはっは、なるほどねぇ。 条件を出そう。

 本当に万病にも効く薬なら買い取る。

 だから、薬を試させて貰ってもいいかな?」


 「構わないぞ。

 薬はこの袋に入っている」

 「粉薬か、結構量多いね、これ全部飲むの?」


 「いや、スプーン一杯分くらいで十分な効果が期待できるはずだ」

 「スプーン一杯ね。 それじゃあ、スプーン2杯分使わせてもらうよ」


 「ああ、構わない」


 薬師のおじいさんがさじを持って来て、ユリアンの袋の中から万能薬をすくいあげる。


 薬師のおじいさんは匙の上の万能薬を少しだけ舐めた後、くちゃくちゃと音を立てて、匂いや味などに意識を向けていた。


 「なるほど、結構旨味はあるけど香りは薄い…… 原料は藻類だと思うけど海の物じゃないね。 とても綺麗な小川とか湖で取れたものかな」

 「凄いな。 そこまで分かるものなのか?」


 「伊達に長生きしてないからね」


 おじいさんはそう言って、匙に残っていた薬を全て口の中へ放り込む。

 味わいながら、スース―と鼻を鳴らしたりして薬に意識を向けている。


 「ふむ、上あごや喉にも違和感はないし、鎮痛作用がある薬じゃないみたいだね。

 少し喉の通りが良くなったし、関節痛の痛みも和らいだ。

 活力も湧き上がって来る…… それじゃあ、もうひと匙もらうよ」


 おじいさんはそう言って、匙ですくった薬をもって奥の部屋へいってしまう。

 しばらく待っていると、おじさんが戻って来た。


 「まさかとは思ったけど、本物の万能薬だね。 重い病で寝たきりのばあさんが体を起こせる様になったよ」

 「それは良かったな。 それじゃあ買い取ってくれるって事でいいか?」


 「ああ、買い取ろう。 薬は儂等の貰った分だけでいい」

 「本当にいいのか? 袋ごとやるぞ?」


 「それを売ったら寿命が縮んでしまうからね。

 長生きした儂からの助言だ。 その薬の事は誰もにも見せない方がええ。

 あまりに効能が高すぎる」

 「それもそうだな。 助かるよ」


 「ほら、このお金をもっていきなされ」

 「ん? 大金貨1枚でいいんだぞ?」


 「婆さんと二人暮らしで金だけは有り余ってるから。 婆さんが助かったお礼だよ」

 「わかった。 ありがたく使わせてもらう」


 ユリアンはおじいさんから10倍の、大金貨10枚を受け取った。

 「ありがとな、気が向いたらまた来るよ」と言ってユリアンは外に出る。


 次に向かう先は奴隷商の店。

 今度は裏通りでは無く、表の通りにある大きな奴隷商の店だ。

 ユリアンとアンネが、奴隷商の店の中へ入ると、背の高いほっそりとした商人が声を掛けて来た。


 「いらっしゃいませ、今日はどの様なご用件で?」

 「性奴隷になる若い男を買いに来た。 みせて貰えるか?」


 「はい、それではご案内しますね!」


 奴隷商に連れられて、ユリアン達は奥の部屋へ通して貰う。

 大きな店なだけあって、奴隷の数も種類も多い。


 「このケンタウロスの奴隷なんてどうですか?

 どこがとは言いませんがアレがものすごいんですよ」

 「アレと言うのはアレの事だな。 ソレは普通のサイズでいい」


 「かしこまりました。 それでは、こっちのはどうです?

 入れるのも入れられるのも得意な元冒険者の男です」

 「んー」


 ユリアンがジロジロと眺めると、元冒険者の男がポーズをとってアピールしてくる。

 ユリアン自身が男を性的に見た事もないので、この男の魅力がいまいち理解できないでいる。

 体も大きくて強面なので、あまりいい印象は抱けなかった。


 「すまない。 もっと優しそうな…… 小さくて可愛い感じの男はいるか?」

 「勿論でございます! どうぞこちらへ」


 

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