第28話 初っ端から苦境

 この地を開拓して以来、初めての催し物と言う事もあって、ユリアンも張りきって守護者ガーディアン大会に参加する。

 

 守護者ガーディアンを作る方法は、種族によって様々だったのだが、普通すぎてデライアに却下されたので、違う方法で制作する事となった。


 守護者ガーディアンは、ドワーフ達の作ったゴーレムを基礎にして、後は自由にカスタマイズをして完成させる。

 カスタマイズで使える特殊な鉱石などは沢山採掘済みなので、それぞれの魔力とセンスで特殊なゴーレムを守護者ガーディアンとして作り上げる。


 耐久力や細かい調整、技術的な事などはドワーフ達が調整してくれるので、どのチームの守護者ガーディアンも、折角作ったのに使えないといった事態にはならないようにしてある。


 参加するチームは5組。

 ユリアンチーム。

 ユリアン、アリエッタ、アンネ、リンネの四人組。


 魔族チーム。

 ジルペット、アンブリース、デライアの三人組。


 ドワーフチーム。

 バレンシア、テオドラ、マルティナの三人組。


 エルフチーム。

 エステル、イザベル、ミレーユの三人組。


 マーメイドチーム。

 アフロディーテとビーナスの二人組。


 既に基礎となるゴーレムは出来ているので、早速ユリアンチームも守護者ガーディアンの制作に取り掛かる。


 まずは、どういった守護者ガーディアンにするのかを決める為、ユリアンはチームのみんなから意見を募った。


 「やっぱり! 攻撃は最大の防御! 高火力の兵器を沢山詰んでる感じのがリンネはいいな!」

 「リンネは高威力の兵器か。 流石に限界はあると思うが、参考にさせてもらう。 他にはないか?」


 「機動力はあった方がいいんじゃないか?」

 「アンネは機動力が必要と、アリエッタからは何かないか?」


 「好きにすれば良いと思うが、他のチームと似たような感じになるのは面白みがない。 奇抜だが守護者ガーディアンとしても優秀な感じに仕上げたい」


 「なるほど、奇抜な感じか。 俺はどうせなら格好良い感じのいいな」


 方針も少しづつ決まり、ユリアンチームは順調に作業を進めていった。

 


 一方その頃、冒険者として旅を続けていたジュリア達はと言うと、グルターク帝国領を抜け、サリッドン王国領入り口にある砦で足止めされていた。


 どうやら、グルターク帝国の王族が魔王軍の手によって討ち取られた事で、厳戒態勢に入っていると言う。

 ジュリア達は四人共、ユリアンの助言に従い仮面を被っていたので、怪しい人物とされ、投獄されそうになっていた。

 衛兵は厳しい口調で、質問を投げかける。


 「貴様等! 何故四人共仮面を被っている? 怪しい事この上ない! 魔族と所縁ある者なのではないか?」

 「そんな事ないわよん? でもぉ、因縁ならあるかしらぁん。 ね、貴方がここで一番偉い人なのぉ?」


 「妙な話し方をする…… 貴様怪しいな! いいだろう、貴様等の事はじっくりと調べてやる! 着いて来い!」


 衛兵に従い、ジュリア達は砦の中にある部屋へと連れて来られた。

 砦の中と言う事もあり、石の壁に覆われた牢獄の様な場所。

 部屋の前には見張りがいて、そこで待っている様に言われ、衛兵は上官と共に戻って来た。


 「おい、女。 仮面を取って見ろ」

 「仮面? いいわよん。 でも、後ろの三人の仮面を取らないで上げて欲しいわ」


 「貴様等に口答えする権限などない。 いいから仮面を取れ!」


 ジュリアは両手を持ち上げ、やれやれといった仕草を行った後、仮面を外すと上官の方が「ほう……」と、自分の顎のあたりをさすりながら、ジュリアの全身を舐め回す様に下から上へと覗き込んでくる。


 「これ程の上玉はとは珍しい。 特別に通してやってもいいが、その為には…… わかっているな?」

 「あらぁん? ご奉仕すればいいのかしらん? でもぉ、ジュリアの体を好きに出来る人ってぇ、決まっちゃってるのよねん」


 「ぐっふっふ。 そんな挑発的な体をしていて何を言う。 毎晩男に抱かれているのだろう」


 上官である男はそう言ってジュリアの方へ手を伸ばすと「下賤げせんな」と言ってオースティンがその手を振り払う。

 

 「あらぁん? お姉さんの事守ってくれるのぉ? オースティンちゃん偉いわね」


 ジュリアがそう言って、オースティンの頭を撫でると、手を振り払われた上官の男が怒りを露にする。


 「下賤げせんといったか小僧? 儂に逆らえばどうなるのか分かっているのか?」

 「言葉が過ぎました。 申し訳ありません。 ですが、その方はさる高貴なる御方に所縁ある方です。 どうかご容赦を」


 「さる高貴なる御方? それならば名前を言って見ろ」


 オースティン深く頭を下げたまま黙っていると、カルティナが仮面を外し、上官の男の前へと割って入る。


 「私の顔をご存知で?」

 「その顔…… 貴方様は、グルターク帝国のカルティナ姫……。 王族は魔王軍によって全滅させられたと聞いておりますが?」


 「ええ、私以外は魔王軍の暗黒騎士の手によって殺されました。 お分かりとは思いますが、魔王軍の次に狙うのはサリッドン王国です。 私は魔王軍の情報を伝えなければなりません。 ここを通して頂けますか?」

 「なるほどなるほど、情報を手に亡命されるおつもりのようですな。 ですが、その情報は必要御座いません」


 「情報がいらない? とは、どういう事ですの?」

 「グルターク帝国が敗北したのです。 我々サリッドン王国が魔王軍と戦争をして勝てるわけもないでしょう。 我々は完全降伏するのです」


 「それならば、なぜ厳戒態勢を?」

 「魔王軍の方々が来られた際に、いち早く降伏する事をお伝えした方が犠牲は少ないでしょう」


 上官の男が合図を送ると、カルティナは衛兵によって、拘束具で身動きが取れなくされてしまい、他の三人も同じように捕らわれてしまう。


 「逃げ出して王族の姫君を渡せば、暗黒騎士殿もお喜びになるだろう」

 「何と哀れな。 あの暗黒騎士がそれで喜ぶと思っているのでしたら、後悔する事になりますわ」


 「ぐっふっふ、命乞いをする姫様もなかなか、そそるものがありますなぁ! 三日ほど熟成させておけ」


 カルティナ達は地下にある牢へと、投獄されてしまった。

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