第12話 ドワーフの三人娘とお菓子が好きなエルフ

 ユリアンはアンネと共に、アリエッタの屋敷を尋ねる。

 扉をノックするとアリエッタが出て来て中へ二人を招き入れた。


 「我に何かようか?」

 「開拓している村の事で相談したい事があるんだ」


 「相談? とりあえず、話してみろ」

 「色々と気になる事があってみんなと相談した結果、アリエッタに聞いておきたい事が出来た。

 アリエッタは、あの村をどうしたいと思ってるんだ?」


 「あの村はお前達が自由に作っていい。 我は特にどうして欲しいとかはないが?」

 「そんな事はないだろう。 6000年以上も掛けてあの豊かな土地を作ったんだろ? 何もないわけがない。

 地底湖だって人工的に作られたってのは分かってる」


 「そんな事か。 別に特別な事でもなんでもない。

 人族の中にもいるだろう? 趣味に没頭し、人生の大半をかけるような人物が。

 我は10000年以上生きているからな。 8000年程費やして、あの地を作り上げた。 ただそれだけの事だ」

 「趣味ねぇ…… じゃあ、どうして移民に色々な種族を俺達に勧めたんだ?」


 「特に理由はない。 しいて言えば合理的だから勧めた」

 「それだけか?」


 「ああ、それだけだ」


 ユリアンはアリエッタに、残念そうに別れの挨拶を告げ、アンネと共に村の広場へと戻った。


 「やっぱり何も話してくれなかったな。 本当に趣味で作っただけなのか?」

 「魔王様は嘘をついていたから、やっぱり何かしらの想いはあるみたいね」


 「どうして嘘をついてたって分るんだ?」

 「魔王様は考え事をしている時とか、嘘をつく時に翼の先で文字を書く癖があるの。 さっき話した時は凄くグルグル動かしてたから、確実に嘘をついている」


 「そりゃそうだろうな。 8000年もついやして何もないわけがない」


 結局、何も進展もないまま振り出しに戻ってしまった。

 だが、ユリアンはこの村の未来をイメージ出来る様になっていた。

 それは、間違いなくアリエッタの想いがここにあると確信したからである。


 ユリアンの描くこの村の未来は、複数の亜人種の暮らす楽園。

 人工はそれ程多く無く、貿易も外交などもしない。

 取引をするとすれば、魔族の街と極一部の種族とちょっとした取引をするくらいに止めて置きたい。

 閉鎖的ではあるが、ここでのんびりと幸せに暮らせるのなら、それ以上の幸せもないだろうと思い描いていた。


 村の未来の為にもまだ話していない村人とも話をしておきたいと思ったユリアンは、アンネと分かれ、ドワーフ達のいる鉱山へとやって来た。


 ドワーフは三人共見た目が似ていて、浅黒い肌をして灰色の髪を結んでいる。

 血縁関係はなく、見た目は少女だが成人している。

 三人は性格も似ていて、男勝りで活発的。

 酒には目が無い。

 一応、髪の編み方でユリアンは見分ける事が出来る。


 後頭部がアミアミなのがバレンシア。

 頭頂部が盛り上がっているのがテオドラ。

 側頭部がアミアミなのがマルティナ。


 立派な作業場があり、その近くに沢山石の山が積まれている。

 三人共そこにいたのでユリアンは近くにいたマルティナに声を掛けた。


 「凄い石の量だな。 中は鍛冶場になっているみたいだな」

 「おお、よく来たユリアンの旦那!」


 「ああ、時間があるから少し様子を見に来たんだ。 困ってる事とかあれば言ってくれ」

 「少しだけかー。 旦那、酒って作れたりする? ここの水で作った酒はさぞかし旨いだろう」


 「アンネに作り方を教えてただろう? たぶん作ってくれているぞ」

 「本当か! あとはー、男だな」


 「男? そうだな、この村は俺以外女の子しかいないし、機会があればお前達を助けた時と同じように連れて来るつもりだ。

 急いで人を増やすつもりはないから、しばらく待っていてくれ」

 「ふふーん。 別に新しい男が欲しいなんて言ってないだろ」


 マルティナはユリアンの手を握り、作業場の方へと連れていく。

 マルティナが作業台に腰かけると、ユリアンを引き寄せ、唇を奪い、足まで絡める。


 ユリアンは少し抵抗するが、あまりに情熱的なくちづけに、体はとろけてしまい、そのままマルティナと行為に発展してしまう。

 その状況を見守っていた、バレンシアとテオドラも参加し、ドワーフ達は飽きるまでユリアンを離さず、日が落ちるまで行為を続けた。


 ドワーフ達の凄いテクニックでユリアンは魂が抜けるような快楽に落とされ、ヘトヘトになりながら自室のベッドの上に寝転がった。


 ユリアンはふと思う。

 このままここにいると、アンネとリンネが帰って来て、もっと疲れる事になるだろうと。


 突然いなくなれば心配されると思ったので、ユリアンは外で泊まって来ると書置きを残し、エルフ達の住む森へと向かった。


 エルフ達の住むツリーハウスへ上り、ドアをノックすると、ミレーユが出て来てくれた。


 「ん? なに?」

 「ちょっと訳ありなんだ。 今日一日でいいから泊めてくれないか?」


 ミレーユは当たりをキョロキョロと見回した後「どうぞ」と言ってユリアンを部屋の中へ案内した。


 中はこぢんまりとしていて、木彫りの可愛らしい人形などが置いてあり、女の子らしい部屋だなとユリアンは思う。

 床にはフカフカでモフモフな絨毯が敷かれている。


 「ここはミレーユ専用の部屋なんだな」

 「うん、エステルとイザベルはもう少し奥の方で別々に家を建ててそこで暮らしてる」


 「そうなのか。 この木彫りの人形や毛糸で作ったぬいぐるみはミレーユが作ったのか?」

 「うん、作った」


 「手先が器用なんだな。 実は、娯楽も取り入れていこうと思ってるんだけど、ミレーユから何か案はないか?」

 「娯楽…… 特に思い浮かばない。 けど、甘いもの好き」


 ミレーユは箱の中から何かを取り出し、ユリアンに手渡す。

 包み紙を開けると、中には飴が入っていたので、ユリアンはそれを口に入れる。


 「甘いし、なんだか疲れ取れた感じがするな」

 「森で取れた素材で作った。 蜂蜜もはいってる」


 「お菓子作りが得意なのか?」

 「料理は出来ないけど、お菓子なら色々作れる」


 「そうか、それじゃあみんなの為に、たまにでいいから作ってやってくれ」

 「うん、わかった」


 ミレーユと沢山話した後、夜も更けてきたのでそろそろ寝る事にする。

 ベッドや布団もないので、ユリアンとミレーユは絨毯の上に寝転がった。


 

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