第五章 帝国の危機と

第41話 闇と光の正体

数時間前。


「リディア様。ただいま戻りました」

「何やら大変なことになっておるな」

「はい。もうすぐで断頭台へ連れて行かれるかと。…よろしいのですか?このままでは貴重な彼女を失うことになりますが…」

「わかっているから、少し黙れ」

「申し訳ありません」


リディアは頭を悩ませていた。


彼女の誕生は帝国の復活。


けれど、その価値を人間が見出す力を持っていないために、こんなことになっているのだ。

その昔、人間が悪用しすぎて魔法を奪ったが、それが返ってこんな事態を招くとは思っていなかった。


「どうやら、私が出る必要があるらしい」


彼女は地上へ降り立つために、「女神リディア」として姿を変えたのだった。


◇◇◇

全く状況が掴めないが、おそらくそれはこの場全員が共通することだろう。

闇と光。正反対の二つが今、私たち人間の前で衝突しようとしている。


【お前はーー女神リディアだな】


低い男の声の主はーーあの闇からきている。そして、もう一つを女神リディアだと言った。


〈ああ、そうだが。しかし、お前はなぜこんなところにいるのだ?ーー魔王よ〉


場がざわめく。

それもそのはず、魔王は常に女神リディア、つまり私たちにとっても「敵」とされてきた存在だからだ。


「パトリシア嬢。悪魔ではないのか?」

「それが…魔王は悪魔の中でも頂点に君臨します。しかし、魔王自身も悪魔の一種ですので人に取り憑くのです」


悪魔というのは、精霊が変化し、人間の「暗黒な」、つまり憎悪、嫉妬などの感情を吸い込んだものだ。

つまり、元は精霊女王に従っていたわけだが…。


【女神リディア。お前は、いつまで精霊女王の座に君臨しているつもりだ?】


「…ーー!」


それは、人類の歴史において、今までで一番大きく、常識が覆された出来事だったーー。




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