第34話 デート

「レティシア。その…よければ、出かけないか」


アルフォンス様がそう提案した後、なんて答えたか覚えていない。


ただただ嬉しくて、私は毎日思い出しては火照っている。



「ねえ、アンナ。どんな服がいいかしら」


アンナは許可を取って私が連れて来た。


「そうですねえ。お嬢様はなんでも似合いますっ!」


今日は可愛らしい、淡いピンク色のワンピースを着る。

髪は横片方に三つ編みした。


「アルフォンス様、お待たしました」


と言いながらも、すでにラフなアルフォンス様に見惚れていたんだけど。


(「可愛い…」)


アルフォンス様は何かを呟いた。


「どう、なさいました?」

「いや、なんでも…」


そう言ってるけれど、アルフォンス様も赤くなっている。


アンナはにこにこと見守ってくれている。


今日は、街へ行く。


「見てください、可愛らしいブレスレットですねっ」


よほど私がはしゃいでいたのだろう、恥ずかしいが、アルフォンス様はにこにこして

これを二つ、と言った。


「ペアで着けるのもいいかと思って」

「わ、わ…ありがとうございます、アルフォンス様!」


一生大事にします。


それからアンナには一つ髪飾りを買ってあげた。


「家宝にします!」とまで言われたけれど…。



帰り際。


「アルフォンス様、今日はありがとうございました、楽しかったです」

「そうか、それは良かった…」


ところで、結婚式はいつにしますかーー聞こうとして、ふとやめる。


どうして、私は結婚できると思っていたの?


ーーあの時の、悲劇を忘れたの?


最近は、浮かれている。

いつ、婚約破棄されてもおかしくないのに。


私は少し暗い気持ちで部屋に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る