第32話 精霊界

ここは、精霊界。


そして、ここを治めるは、精霊女王リディア。

人々は、彼女を「女神リディア」と呼ぶ。


「今の皇帝は莫迦だな、アデル?」

「ええ」


玉座に座るリディアは、水晶越しに地上を見る。


目に映るのは、贅沢をする皇帝と、頭を悩ませる皇太子。


「全く、なぜこんなのが皇帝になったのか。不思議だ」


はあ、とため息をつく。

けれど、彼女も娯楽はある。


「それはそうと、続きが楽しみだな」

「レティシアと皇太子ーーでありますか?」

「ああ、アデルが教えたからかな」

「少しですよ」


アデルと呼ばれる男性は、いつもリディアのそばに控えている。


「じょおうさま、がしるしをつけました」


水の精霊の代表が報告する。


「そう。ならもうすぐ来るだろうな」


◇◇◇

私はもう一度図書館で『古代魔法』の本を開く。


しおりからページを開く。


やはり、真っ白でーー。


「きゃ、何?」


突然、溢れんばかりの光が出てきたのだ。


「ねえねえ、、わたしのせかいにしょうたいするね」


小さく可愛らしい妖精は、水を出し始める。


「しゅっぱつ!」


彼女は美しく回転するように水の渦を作った。


「きゃあああ」


たちまち吸い込まれていく。


目を閉じて、開けるとそれはどこかわからずーー玉座に座る女性が。

とりあえず、位の高いかただろう、お辞儀をする。


「子爵令嬢レティシアさん?ようこそ精霊界へ」


彼女はにっこり笑った。










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