第四章 新たに
第31話 帝国の今
ルビィ嬢の実家、フォワード侯爵家は、伯爵に降爵し、父親も娘を見限ったという。
母親は、未だ助けて欲しいと懇願し、それの対応も疲れているとジュークは話していた。
「最近は不作のようです」
報告書には、今までにない日照りと、雨が降らないことから水不足が生じていると書かれていた。
しかし、国庫金など、もはやないに等しいのだ。
「父上、国庫金が足りません。贅沢をやめてーー」
「ならば税を引き上げれば良い」
「は…?」
父は、残念ながら、皇帝の器が足りない、まともに国を治められない「莫迦」だ。
「去年も引き上げたというのに、これ以上はーー」
「うるさい、民など知らぬ」
これだから、父は嫌いだ。
そもそも、素行が悪い。
去年は税を、それも大幅に上げたというのに。
しかも、今一番解決するべきーー伝染病に対する対応が全く行われていない。
これ以上放置すると規模が広がり広範囲で餓死する人、病死する人が多発するはずだ。
そして、一番懸念されるはーー反乱。
皇帝の贅沢は国の混乱。
それがわかっていないのだ、父は。
私は皇太子だからできることは限られている。
「どうしたものか…」
こうして毎日頭を悩ませている。
「あとは、愛し子が現れるのを待つのみです」
ーー愛し子。
他国でいう「聖女」のような、女神リディアの加護を、一般とは比べ物にならないほど大きく受ける人のことだ。
そして、愛し子は国の秩序を正すと言われているが、問題は前皇帝二代で現れなかったこと。
つまり、期待するしかないということだ。
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