第23話 皇太子の決意

数時間前。


「殿下。まだ考えてらっしゃるのですか。もう準備しませんと」


ジュークが私に声をかける。


だが、一向に決まらない。


ーー本当にレティシアを守れるのか?

ーー本当に婚約した方がいいのか?


あの黒いローブの男を気安く信じて良いのだろうかーー。


「信じられないの?」


考えると現れる仕組みなのか、彼はまた私の目の前に姿を見せた。


「レティシアはいつもと違う選択をして生き延びたでしょ?じゃあ、お前もそうするべきなんじゃないの?」

「…お前は何がしたい」

「え、それ聞くの?」


彼は少し考えてから、くくく、と笑い出した。


「お前たちの手助け」

「は?」

「いい?みんなが信じてる、女神リディア様から、だよ」


そう言って、再び去る。


全てを教えてはくれない、か。


女神リディアーーイライザ帝国の九割が信じる神で、イライザ建国時から国を救ってきたと考えられている。


彼の言うことを信じなければ女神リディアに逆らったことになる、と言っているのか。

上手い方法だ、と感心する。

とても女神リディアと関わっているとは思えないが、万が一の場合、背けば罰当たりだ。


それにーー私は、レティシアのことを何も知らない。

愛している、と言っておきながら知らぬことがたくさんあるのだ。


ならば、試してみるのもいいかもしれない。

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