第9話 再びラドン街へ

「アルフォンス。しばらく休みを取りなさい」


休み無しに働き詰めだった私に、母である皇后は言った。


もともと、ラドン街の人達がもう一度来て欲しいと、申請していたらしいから、ラドンへ行ってはどうかと提案してきたのだ。


ということで翌日、私はラドンへ向かった。

商店街を歩くなかで、いくつも服店を見かける。


そうだった、ラドンは服が有名なのだ。


そこで、私はある人を見つける。


青い瞳に黒い髪の、あの少女ーー。


「ジューク、入るぞ」

「え、は、はい」


いつもは行かないから驚いているのだろう、私でもなぜこんな行動をしているのか不思議だ。


「いらっしゃいませ」


可憐なお辞儀を見せた彼女は、間違いない、あの時レティシアと重ねた少女だった。


様子を見るにつれ、彼女は表情が豊かだということが分かってきた。

レティシアであれば、あんな表情はしない。


勝手にレティシアだと思いこみ、重ねた自分に腹が立つ。


私は、きっと焦っているのだ。


◇◇◇

大丈夫、バレていない。


私はよく笑い、悲しみを表せるようになった。

それが来た時よりはっきりしてきたと、ソフィアさんは言った。


だから誰も、人形令嬢なんて思わないだろう。


私に傷をつくったその呼び名を、もう呼ぶ人はいない。


「またのお越しをお待ちしております」


殿下が帰る時、私は満面の笑みで見送った。

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