第4話 ラドン街へ

するすると、カーテンを伝って降りていく。


大丈夫、バレない。


私はこそっと隠し通路を通る。

この後が、問題だ。


そっと様子を伺って…


寝過ごした兵を起こしに、見張りの兵が2人から1人になった。


しかも、残った人はものすごく眠そうだ。


「おーい」


呼びに行ったらしい兵が戻ってきて、残った1人は後ろを振り向く。


今だ!


なるべく音を立てずに外に出て、私は無事逃亡した。


1週間後。


「アナ!これもお願い」

「はい、ソフィアさん!」


いつも無表情だと言われていた私は、すぐに打ち解けて表情が柔らかくなった。


ラドン街に無事入れてもらえた私は、1つの高級服店で厄介になっている。

オーナーのソフィアさんは、訳ありの私に何も聞かずに雇ってくれた。


私の仕事は接客で、それ以外は店の用意。


髪は銀から黒に染めて、ミドルネームの「ティアナ」からとった名前「アナ」を名乗っている。


レティシアなんて、貴族令嬢にしかいないわよ。


「綺麗な礼儀作法ね」


ソフィアさんは感心していた。


もちろん、全くバレずに接客までできている。


ソフィアさんが営むその店の近くの家を借りて、住んでいる。


ラドン街の人々は、とても親切だ。

私はもう、このまま生きていたいと思うようになった。


1つ、願いが叶わなかったとすれば、殿下に会えなかったことだろうか?

だが、会って計画がバレてもいけないので、そこまで大きな願いではないが。



しかし、神様は残酷だった。

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