第二章 皇宮住まい
第11話 泉のほとりで
「申し訳ありません…」
睨みつけるが、あまり効果はない。
「なぜ、家を出たのですか」
「あの人たちは、私を道具としか思っておりません」
彼らはじっと聞いている。
「殿下。婚約破棄なさるおつもりでしたでしょう?」
「っ…!」
ああ、ほら。
だから、期待してはいけないの。
逃げて、正解だった。まさか、こうも失敗するとは思わなかったが…。
「そうなれば、皆私を捨てるのですわ」
「どうして断言できるのですか?」
殿下の従者らしき人が問うてくる。
ループした、と言っても信じてもらえないだろう、けれど、言い訳が思いつかない。
それくらい、私は今混乱している。
素直に言うことしかできない。
「私はもう、経験しましたもの」
「…は?」
そう、こういう反応だとわかっていた。
皆が呆気に取られている。
ただ一人ーー殿下を除いて。
「殿下は、驚かれないのですね」
「ええ、理解しました」
理解、した?
私の、ループを?
「どういうことでしょう?まさか、殿下も…」
「ええ。戻ってきているな、とは」
まさか。
そこで、私はあることに気づく。
だって、そんなことがあってしまえば、彼はーー。
すぐに私の心は憤りで満たされた。
「それはつまり…過去に私にしたことを知っておいて繰り返していた、と?」
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