第42話 失礼な皇帝

「父上!今のをお聞きになりましたでしょう?レティシアを…」


解放しろ。

そう言おうとしてーー父がおかしいことに気づく。

どうしたのだろう、あんなに取り乱すなど…。


「ま、待て。お前たちは、神じゃない。そうだろう?」


突然何を言い出すのかと思えば。

それは、神への冒涜ーーレティシアと同じ罪に問われる。


〈いいや、私たちは人間ではない。神と呼ばれるべきなのかは知らぬが…少なくともお前のいうことは違うだろう〉


幸い怒って国を滅ぼすわけではなくて安心した。


「私は皇帝だ」

【…ああ。だから?】

「私の言うことは絶対だ」


ーーは?

父は、何を言っている。

女神リディアとは国を守る存在、その神の怒りに触れたら、イライザ帝国民全員が危機に陥ることがわかっているのか?

それに女神を前に「私の言うことは絶対」など普通は言えない。

確かに、父は今狂っている。


父の暴君ぶりは、政治を見ていればわかる。


「父上!これ以上は、失礼に当たります…!」

「うるさい!第一、彼らが神だと示すものは?ないだろう?」


こうやって勝ち誇ったように私を見る目は前々から気持ち悪くて。


〈はあ、そなたが皇帝か。どうりで傲慢だ〉

「なっ、神であるかすら証明できないくせに何を言う!」

〈お前こそ、政治ができないくせにでしゃばるな〉


皇帝を見下す顔は悪寒がするほどぞっとする。


〈ああ、いいことを思いついた〉


女神リディアはにっと笑ってそれからある提案をしたーー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る