第15話 新たな客

「皇宮まで来て、何の用だ。ーーパトリシア・ラスティ・トゥリビア嬢」

扇子で隠した彼女は、にっこりと微笑んだ。


◇◇◇

私はだいぶ回復したが、なぜか皇宮でお世話になっている。

しかも一人の令嬢に相応しい部屋を与えられ、食事もだ。


「レティシア様。お客様が」


応接間に案内される。


「こんにちは、パトリシア嬢」


パトリシアは公爵令嬢で、一度殿下の隣に並んでいたことがある。


「どうなさいまして?」

「…あなたは、家を出た、と聞きましたの」

「ええ、事実です」

「ならばなぜ、ここにいるのですか?」


彼女からは、初めの笑みは消え、ただこちらを睨んでいた。


「私にも分かりかねますわ」

「馬鹿にしないでくださる?」


ああ、これは怒りを買ってしまうわ。

けれど、なぜ助けられたのか、私にもわからないのだ。


パトリシア嬢はくす、と笑った。


「一体どんな手を?」

「特に何も」


私を品定めするように見た後、彼女はああ、怖いわ、と扇子を再び開いた。


「本当、無表情。まさに人形ですわね」


ーーああ。


この人だ。この人が言ったのだ、「人形令嬢」と。


「…淑女とはそうあるべきでしょう?」

「淑女は家出などしませんわ」


彼女はたまに痛いところをついてくる。


「つい先ほど、殿下にお会いしましたの、そしたら、なんとおっしゃったと思います?」


彼女の偽りの笑みは、やがて嫉妬へと変わる。


「あなたとは、婚約破棄しないとおっしゃいましたのよ!」
















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