第14話 黒いローブの男

「お前は誰だ!」


ジュークが私の前に立ち剣を向ける。


「まあまあ、落ち着いて」

「ジューク、剣を下ろせ」


二人に言われて彼は一歩後ろへ下がるが、警戒は怠らない。


「久しぶりだね、皇太子殿下?」


まさか。


「お前も、ループを?」

「いいや、違うね」


確かに、いつもと話し方が違う。


低い声の時、高い声の時、今みたいに馴れ馴れしい時ーー。


「だけどさあ、何回失敗してるの?」

「…わからない」


へえ、と男は言う。


「そっかあ。数え切れないくらいーー沢山裏切ったんだ?」


ぞくりとする。背筋が凍りそうで、思わず目を背ける。


「…仕方がないだろう、レティシアは私のことなど愛してはいないのだから」

「へえ?鈍感なんだね」


男はこちらへ歩いてきた。それに連れて、私たちは一歩ずつ、後退していく。


「言ったよね?ーー死ぬ時は、お前の名前を呼んでいたって」


それがどうした。

恨みから、呪うように発したのではないのか?


「僕は、正解探しを応援するしかないかな」


彼はふっと消える。


「殿下。あの人は?」

「…」


誰か、なんて、私にもわからない。


急に現れ、呆気なく消えるけれど、そんなことを気にする余裕などなかった。


そういえば、殺しにくる、以外で現れたのは今回が初めてだ。


レティシアは、知っているのだろうかーー?

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