第6話 残された人達

「どういうことだ!」


エリオット侯爵は、怒り狂っていた。

侯爵の部屋は荒れて、家具、壺、様々なものが倒れ、割れ、使用人たちは忙しく片付けに追われていた。


「あなた、気持ちはわかりますわ。けれど、落ち着いてください」


侯爵夫人がなだめる。


もちろん、原因はレティシアが置いた手紙にある。


『私は出ていきます。お母様、お父様、お兄様、今までありがとうございました。私は婚約破棄を申請いたします。レティシア』


たったこれだけの手紙がもたらした憤りは、もちろん皇太子が訪ねてきたときも続いてた。


◇◇◇

「殿下、申し訳ございません…」


ーー嘘だ。


侯爵から聞いた情報は、私にとって大きな衝撃を与えた。

今までになかったというのに、なぜ今回になって。


しかも、婚約破棄要望まで…。


「なぜ分かる?」


私がしようとしていることを。

なぜ見抜く?


さらに、私が驚いたのは侯爵たちの態度だ。


「あの小娘…!」

「使えない子ですわ、まったく」

「役立たずめ」


イライザ1の、娘を溺愛する家族だと、社交界で有名だったはずだ。


それなのに、私が今見せられているものは?


「殿下、ご心配なく。娘は必ず帰らせますので」


私が心配しているのはそれじゃないーー言いかけてやめる。


どうせ、届かないのだ。






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