第19話 いつもと違う、家族の顔
「私たち、こんなに大切に育ててあげたのに」
「なあおい、なんとか言ったらどうだ!?」
バチン、と平手打ちを受ける。
「婚約、破棄、は…」
「するわけないだろう、馬鹿が!」
お母様が、扇子で顔を打つ。
もちろん、顔から血が滲み出る。
「ああ、汚い。扇子が汚れてしまったわ」
「「「これ以上馬鹿なことはするなよ(しないでよ)?」」」
怖い。
そうだ、あの時も。
でも、助けて、と言っても誰もーー。
「何をしている?」
凍えるような瞳で彼は入ってきた。
「殿下…」
一体、彼は、私に何をするのーー。
彼が前に手を出したのを、私は殴られると勘違いしてぎゅっと目を瞑る。
けれど、それは、私の血を拭ってくれた。
「え…」
それから、侍女に銀食器ーースプーンを持って来させる。
私に、母が淹れたという紅茶につけてーー。
「っ…!」
色が変わる。
これはつまりーーそういうことだ。
「おかあ、さま…一体、なぜ」
「な、何のことかしら」
母はさっと扇子で顔を隠す。
しかし、そこで兄が口を挟んできた。
「バレたなら、仕方ないか。それは、思ってる通り、毒だよ」
「っ…!」
でも、なぜ?
殺したら、道具が減る。私以外で女子はほとんどいないけれど…
「大丈夫、死には至らない」
…そういうことか。
死なない程度に毒を盛って、皇太子に責任をとらせて婚約破棄の道を防ぐ、と。
なんとも浅ましい考えだ。
そして、皇太子はある書類を目の前に差し出した。
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